多糖類の特性~各社キサンタンガムの違い「相乗効果や粘度発現速度」~

前回までの豆知識では、キサンタンガム単独で使用した場合の塩分の影響や加熱の影響、ガム濃度の影響を中心にご紹介しました。

 では、キサンタンガムの大きな特徴の1つであるガラクトマンナン反応性はどうでしょうか。キサンタンガムはグァーガムと相乗性を示すことで大幅に増粘し、ローカストビーンガムと混合した場合にはゲル化することが知られています。今回は、グァーガムとの相乗性を例にとって、効果の差を確認しました。

 横軸にキサンタンガムとグァーガムの比率を取り、各混合比率の加熱溶解液から得られた粘度を比較しました。キサンタンガム含有率が0%の箇所がグァーガム単独の粘度。逆にキサンタンガム含有率が100%の箇所がキサンタンガム単独の粘度になります。相乗効果がない場合には、各混合比率における粘度は、キサンタンガム単独の粘度とグァーガム単独の粘度をその比率で足した粘度になるはずです。しかしながら、実際にはそれ以上の粘度をすべての混合比率で示していることから、すべてのキサンタンガムがグァーガムとの相乗性を有していることが分かりました。
 しかし、得られる粘度には大きな開きがあり、最大の粘度を示す混合比付近で比較すると、BとDのキサンタンガムでは倍以上に差が出てしまいました。この結果から、Bのキサンタンガムは特にグァーガムとの相乗性が高く、Dのキサンタンガムは相乗性が特に低いキサンタンガムであると考えられます。

 最後に、それぞれのキサンタンガムの粘度発現速度を比較してみましょう。粘度発現速度とはキサンタンガムを溶媒に分散して攪拌を行った場合に、しっかりと粘度を発揮した状態になるまでの時間を表します。キサンタンガムを水道水や脱イオン水に溶解する限りでは、そこまで大きな差は現れません。しかし、キサンタンガムは塩が存在するような液に対して溶けにくいため、食塩水に対して溶解すると以下のように差が大きく現れます。

 AやCのキサンタンガムは比較的短時間で粘度を発揮しましたが、Dのキサンタンガムは特に粘度を十分に発揮するまでに多くの時間を要し、Cの倍以上の時間が必要でした。  

 この差は、溶解する際のダマの出来やすさや、作業効率等に影響を及ぼします。例えばCのキサンタンガムは非常に素早く粘度発現しますが、ダマができ易い可能性が考えられます。一方、Dのキサンタンガムはダマは出来にくいかもしれませんが、所定の粘度を発揮するまでに時間がかかるため、添加量の調製や工程管理において作業効率が低下してしまうかもしれません。そのため、ラボスケールで処方検討などを行う際には気にならなくとも、実際の商品製造の段階で問題となる場合があります。

 これまで3回にわたって、非常に簡単な比較ではありますがキサンタンガムの違いに関する紹介を行いました。しかしながら、この結果をもとに「このキサンタンガムが優れている!」という訳ではなく、各種の特性を理解して活用することがポイントになります。様々な使用条件、製品で同じキサンタンガムを使用する場合には外部の影響を受け難いキサンタンガムが有用です。一方、塩が含まれていない場面で高粘度を求める場合には、より適したキサンタンガムを検討することも有効だと考えます。

 次回の豆知識では、以前にご紹介したゲルのSEM画像に関連して、写真の取得に使用した装置をご紹介します。

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