測定手法のお話~SEMを使ってみよう!「SEMの原理」~

以前の豆知識でご紹介した走査型電子顕微鏡(Scannning Electron Microscope:以降、SEMと省略)について、今日はデント君が講義を開くようです。早速覗いてみましょう!
デントくん:本日はよろしくお願いします!

ロイドくん:えらく緊張しておるようじゃが、楽にして話しておくれよ。

デントくん
:ありがとうございますっ!では、今日は僕からSEMについてご説明したいと思います。

エコーちゃん

なんだか先生みたいで、デントくんすごいねー。けどSEMって何だっけ?

デントくん

・・・・・。えーと、SEMは走査型電子顕微鏡の略称で、非常に詳細な表面観察を行うことができる顕微鏡なんだ。今日はその原理や測定手法を説明しようと思います。

ロイドくん

なんだか話し方が変になっておるのぉ・・・。わしのことは気にせず普通に話してごらん。

デントくん

なんだか恥ずかしいですね。では、改めて!SEMは試料に電子線を照射して発生する信号から画像を得る測定機器なんだ。対象を可視光で観察する一般的な顕微鏡とは違って、電子線を使って観察するから、より細かい試料表面の観察が得意なんだ。

エコーちゃん
:なんだか難しそうな測定機器だけど、普通にゲルを観察できるのー?

デントくん

するどいねー!実は一般的なSEMは真空中で観察することが必要だから、水分をたくさん含んでいるゲルを直接観察することはとっても難しいんだ。そこで、適切な試料の調整や観察方法の選定が必要になるんだけど・・・・。

エコーちゃん
:すごく細かな観察ができても、使うのが難しいんじゃなー・・・。

デントくん

でも、倍率がとても高かったり、焦点深度が深いなどメリットも多いんだよー。一般的な光学顕微鏡や実体顕微鏡も細かな観察を行うにはすごく優れた観察機器だけど、観察手段が可視光だから倍率に限りがあるんだ。理論上は0..2μmが限界分解能と言われていて、その上、高倍率になると焦点深度が浅くなるから、対象を立体的に捉えられなくなってしまうんだ。

エコーちゃん
:ちょっとまってー!焦点深度って何―?

デントくん

焦点深度っていうのは簡単に言えば、ピントが合っている位置から前後させてもピントがあったままの範囲の事をいうんだー。立体的な対象や凹凸を観察する時、焦点深度が浅いとピントが合っている小さな範囲は観察できても、その他の部分はボケてしまって不鮮明な画像になってしまうんだよー。

ロイドくん
:ふむふむ。ではSEMはどのくらいの倍率まで観察できるんじゃ?

デントくん

その装置の性能や試験環境にもよりますが、一説には最高分解能で1 nm程度は観察可能といわれています。その上、焦点深度が深いので、対象を立体的に観察することができます。

エコーちゃん
:なんかすごいねー。けど欠点はないのー?

デントくん

そうだなー。白黒画像しか見られないことは欠点といえば欠点だと思うなー。SEMは電子を試料に照射して、出てきた電子の強弱で画像を取得しているんだ。簡単に言えば、電子が多い部分は明るくなって少ない部分は暗くすることで画像にしているから、白黒になっちゃうんだよー。けど、電子を検出して画像にするから、ミクロの凹凸もはっきりと観察することができるんだよー。

エコーちゃん
:そうなんだー。ところで、さっきから登場する検出する電子っていうのは何者なのー?

デントくん

えーと、実は試料に電子線を照射することで、様々な種類の電子や光が放出されるんだ。その中でも電子だと二次電子や反射電子、オージェ電子、光だと元素分析に使われるX線や内部情報の観察に使われる蛍光など、色々なんだ。

ロイドくん
:SEMにはどれが使用されているんじゃ?

デントくん

主に使用されるのは、二次電子と反射電子ですねー。二次電子を利用したSEM観察は、表面構造の検出に向いているといわれています。二次電子は試料を構成する元素の持つ価電子が放出されたもので、非常にエネルギーが小さいことから試料内部で放出された二次電子は表面に届かずに試料中で吸収されてしまうからです。そのため二次電子を利用した場合は、試料表面から10nm程度の浅い部分から放出されたものだけを検出しているとされています。その他にも、試料に対して垂直に電子が入射した場合より斜めに入射するほうが二次電子の放出量が多くなるので、試料の斜めの箇所は明るくなり、平坦部と区別がし易いため、試料表面の凸凹観察に適しているとされています。

ロイドくん
:なるほどのぉ・・・。では反射電子はどうなんじゃ?

デントくん

反射電子は、試料に照射した電子が試料中で散乱し、試料表面から再び放出されたものを指します。そのため、二次電子と比較して強いエネルギーを持つことから、試料表面だけではなく深い部分の情報も持っており、試料表面の電子が入射した箇所の傾きによって強度が変化することで、表面の凹凸観察も可能になります。その上、試料の組成の影響が大きく、構成物質の原子番号が大きいほど反射電子が多く放出される性質を持っています。これらの特性から、反射電子は表面構造だけでなく、内部構造や組成の影響を受けた画像を取得できるんです。

ロイドくん

それだけ検出原理が異なるのであれば、得られる情報や画像も違うんじゃし、観察対象に適した手法をしっかりと選択せねばいかんのぉ・・・。ところで、デントくん。エコーちゃんが・・・・。

デントくん
:大変だー!どうしよう・・・。

ロイドくん

そうじゃなぁ・・・。少し、実際の観察の様子などを交えながらゆっくり話を進めていこうか。

エコーちゃん
:さんせーい!実物を見ないとイメージできないよー!

と、言うわけで次回の豆知識では、実際の画像を交えながら活用法などをご紹介予定です。

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