物性のお話~粘度 その3 「ニュートンさんに従わないもの」~

前回の豆知識では、液体に加える力が変化したとき「粘度が変化しない水あめはニュートン流体と呼ばれる特性である」とご紹介しました。
 では、ニュートン流体ではないマヨネーズは何者なのでしょうか? 

と、お話を始めるその前に、ニュートン流体のニュートンを前回の豆知識で「リンゴが木から落ちた!と言ったかもしれないあのニュートンさん」とご紹介しました。ニュートンさんは「りんごが落ちたことから、重力を発見した」と、誤解されがちなのですが、実は重力自体はニュートンさんが生きていた頃には既に理解され始めていたのです。では、ニュートンさんは何を成したのか?
 それは、「重力は身近なリンゴだけではなく、星などの宇宙のどこでも働く力じゃないのか」と示したのです。万物が有する引力で「万有引力」という訳です。それまでは、宇宙等は別の力で動いていると考えられていたため、この考えは非常に斬新な着想であったといわれています。賛否両論があるとされるニュートンさんですが、業績は偉大なもので、本稿で取り上げているニュートンの粘性法則等は、ほんの一部にしか過ぎません。ただ非常に残念ですが、これ以上、本格的にご説明するととんでもなく大ボリュームになりますし、そもそもリンゴの話も創作ではとの説もあるため、ここでは簡単なご紹介のみとさせていただきます。しかし、このお話はガリレオさんやフックさん、アインシュタインさんなどの、きっと授業で1度は聞いたことのある超有名人も登場する、少しドロドロした物理の歴史のお話ですので、もしご興味があればお調べください。 

ずいぶん脱線してしまいましたが、そんな偉大なニュートンさんの名前が冠されたニュートン流体。その特性に従わないマヨネーズの特性は非ニュートン流体といわれています。ひねりのない名称ですが、工業的に利用される多くの液体はニュートン流体以外の様々な特性を示すため、「非」を頭に付けることで、総称として使用されているのです。

その中で、マヨネーズのように加える力を強くすることで粘度が低下する特性をシュードプラスチック性(擬塑性流体)といいます。この特性から、保管しているマヨネーズは液が動かず、チューブを押せば粘度が低下して液を搾り出せるようになり、搾り出した液は付着した先で力が無くなってタレ落ちにくくなります。さらに食べるときにはモグモグと力がかかるので、口の中では粘度を感じにくくなります。一方で、ニュートン流体である水あめはどの状況でも一定の粘度を示すため、どんな状況で粘度を比較するかによって、「ドロドロ」の強さの感じ方が変わります。通常、皆さんが粘度を感じるのは、「ドロドロ」した液が動いているタイミング、つまり何らかの力がかかっている状態が多いと思いますので、粘度が低下するマヨネーズより、粘度が一定の水あめの方が「ドロドロ」していると感じやすいのです。 

「水あめ」と「マヨネーズ」で長く話をしましたが、このページは「多糖類.com」という多糖類の話をするサイトの1コーナーだったはず・・・。ずいぶんと長い前置きとなりましたが、多糖類の中でこういった性質は「タマリンドシードガム」と「キサンタンガム」の水溶液で顕著に観察できます。素早くかき混ぜるとほぼ同じ粘度になるように調整した2種類の水溶液を、ゆっくりかき混ぜたときの粘度で比較すると、ニュートン流体を示す「タマリンドシードガム」に比べてシュードプラスチック性を示す「キサンタンガム」の方が約5倍の高い粘度を示すこともあります。

ただし、物事はそんなに単純な訳ではなく、同じ成分の水溶液でも,濃度の違いにより溶液の挙動が異なります。薄い濃度の水溶液ではニュートン流体を示す物質も、臨界濃度と呼ばれるある一定の濃度を超えると、非ニュートン流体の挙動を示すこともあるのです。

 そんな性質の異なる2種類の多糖類は当社でも取扱があり、タマリンドシードガムは「グリロイド®」、キサンタンガムは主に「エコーガム®」という商品名で販売しています。そんな商品から産まれた、当社非公認キャラクターがエコーガム由来の「エコーちゃん」、グリロイド由来の「ロイドくん」の2人。
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2015年9月10日更新予定の次回豆知識では、この2人が様々な種類の非ニュートン流体を紹介してくれます!

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