寒天は、紅藻類(Rhodophyta)中に存在する粘性物質を熱水で抽出して得られます。日本では古くから食されている多糖類です。

1.構造

寒天は右図に示すようなガラクトースを基本骨格とする構造をしており、中性のアガロースとイオン性のアガロペクチンからなっています。

アガロース

図:寒天の構造

アガロースは寒天中の大部分をしめ、アガロペクチンは寒天成分中のアガロース以外のイオン性の多糖類のことを指します。その構造はアガロースと同じ結合形式をしていますが、部分的に硫酸エステル、メトキシル基、ピルビン酸基、カルボキシル基を含んでいます。寒天の平均分子量は原料である海藻の種類や抽出条件によって異なりますが、一般的に数万~数十万と言われています。

アガロペクチン

図:寒天の構造

2.製造工程

寒天は一般的に原料を水洗して付着している砂や貝殻などを除去した後に、熱水で抽出してろ過します。その後、ろ液を冷却してゲル化させ、圧力や冷凍により脱水させて粉砕して製造します。寒天には粉末寒天、フレーク状寒天、糸状寒天、角寒天などがあります。

図:寒天の製造工程

3.特性

溶解性

寒天のゲルは耐熱性に優れ、ゲルの凝固点と融点の温度差が大きく、ゲルの構造が強固なため、一般的な寒天を溶解させるには大きなエネルギーが必要となります。したがって、寒天を溶解させるには通常沸騰する程の昇温が必要です。

物性

寒天は溶解させ、冷却することでゲル化します。溶液の状態では寒天はランダムコイルの状態で存在し、冷却することでダブルへリックス構造をとります。さらにダブルへリックスが三次元のネットワークを形成し、ゲル化します。

物性
離水

寒天のゲルは一般的に離水が多いのが特長です。離水が多いということは短所にとらえられがちですが、みずみずしく味を感じやすいという長所であるともいえます。

4.応用例

耐熱性

寒天のゲルの融点は90℃以上で、耐熱性に優れています。

食品への応用例

対象食品 添加量 使用効果
ゼリー 0.5~1.5% 耐熱性のあるゼリーを作ることができます。透明性が高く、もろくて硬いゼリーを作ることができます。
和菓子 0.2~1% 糖と併用することでより透明度が上がり硬くなります。羊羹やところてんなどに使われます。
佃煮類 0.01~0.1% 加熱時に粘度が低いので扱いやすく、照り・つやの良い佃煮を作ることができます。
みつ豆缶詰 0.2~1% 耐熱性に優れているので高温で殺菌してもゲルを保つことができます。
デザート類 0.2~1% 耐熱性付与に加え、テクスチャー改良ができます。
介護食 0.2~1% 耐熱性に優れているので、料理を温めても形を保つことができます。
医薬品 0.01~5% 医薬品、医薬部外品に使用することができます。
培地用寒天 0.8〜2% 純度の高い寒天を使って培地を作ることができます。