ローカストビーンガムは学名Celatonia siliqua Linneと呼ばれる地中海沿岸のような乾燥した土地で栽培、自生している豆科の多年生常緑樹カロブ樹の種子から得られる多糖類です。原料である樹木の名称からカロブビーンガムとも呼ばれ、カロブ樹は日本ではイナゴ豆(Locust bean)と呼ばれています。その豆の莢や果肉部分は甘みがあり、非常に古くから食経験があるとされています。また、直接食用に利用されるだけでなく、乾燥させたものはキャロブと呼ばれ、ココアやチョコレートの代替品として、又は健康食品として利用されています。ローカストビーンガムの原料である種子はこの豆の中に含まれており、ダイヤモンド等の宝石の重量を示すカラットの語源ともいわれています。

種子から得られたローカストビーンガムは、古くから様々な用途で利用されてきましたが、今ではその多くが食用に利用されています。

1.構造

ローカストビーンガムは、右図に示すような繰り返しの単位からなる多糖類です。
主鎖がマンノース、側鎖はガラクトースで構成されており、ガラクトマンナンと呼ばれる電荷を持たない水溶性高分子に分類されます。ガラクトースとマンノースはランダムに1:4の比率で存在しており、この比率が1:3のものをタラガム、1:2のものをグァーガムといい、総じてガラクトマンナンと呼ばれています。ローカストビーンガムの分子量は約30万といわれています。

図:ローカストビーンガムの構造

2.製造工程

ローカストビーンガムはカロブ樹(イナゴ豆)の種子を原料とし、多糖類成分を分離・精製して製造されます。

図:ローカストビーンガムの製造工程

3.特性

溶解性

ローカストビーンガムはガラクトース側鎖が少なく、マンノース主鎖同士が水素結合により強固に結合しているため、加熱による溶解が必要となります。ただし、製造工程中で処理を行うことで、冷水可溶タイプの製品も販売されています。

粘度

ローカストビーンガムは添加量に比例して粘度が大きくなり、他の多糖類と比較して高粘度を示します。

粘度
流動性

同様の構造を持つグァーガムよりもわずかですが、シュードプラスチック性を示します。
また、曳糸性がなくすっきりとした粘性を示します。

流動性
加熱の影響

水溶液を高温に長時間放置する事で、粘度が低下し、特に酸性領域ではその変化が顕著となります。

流動性
凍結・解凍による影響

通常、ローカストビーンガムは単独ではゲル化しませんが、溶液を凍結した後に解凍すると、ゲル化することが知られています。この現象を利用して、保形性向上の目的で冷菓安定剤として使用されています。

相乗効果(ゲル化)

ローカストビーンガムは、カッパカラギナンやキサンタンガムなどの他の多糖類と併用することで弾力のあるゲルを形成します。

ローカストビーンガムとキサンタンガムの配合比率とゲル強度(例)

ローカストビーンガムにはガラクトースの側鎖がついた部分とついていない部分(スムース領域)があります。このゲル化は、ローカストビーンガムのスムース領域がキサンタンガムやカラギナンの二重らせん部分に結合することで架橋を形成し、ゲル化すると考えられています。

ローカストビーンガムにはガラクトースの側鎖がついた部分とついていない部分

4.応用例

食品への応用例

対象食品 使用量 使用効果
冷菓 0.05~0.25% 増粘作用によるボディ感の増強
保水作用によるヒートショック防止、
氷結晶の成長防止、オーバーランの向上、保形性付与、テクスチャー改良
デザート類(ゼリー、プリン 等) 0.05~0.5% キサンタンガムやカラギナンとの併用で、弾力のあるゲルを作り、
離水を防止します。
増粘剤 0.05~1.0% とろみを付与します。