多糖類の主な使用目的
多糖類は、一見するだけではなかなか分からない多種多様な目的に使用されています。以下の表1は、多糖類がよく用いられる製品のまとめになります。
ドレッシング | デザートゼリー | 冷菓・アイスクリーム | ソース類 |
パン・ケーキ | 飲料 | 麺類 | 冷凍食品 |
菓子 | ジャム | 揚げ物 | 漬物・佃煮 |
化粧水 | 乳液 | シャンプー | 洗顔料・ボディーソープ |
ファンデーション | 歯磨き | スタインリング剤 | 高齢者向け食品 |
塗料・インク | 洗浄剤 | セラミックス | 接着剤 |
多糖類とは
多糖類概要
多糖類はわれわれの生活の中で、非常に多く利用されているものですが、代表的でイメージしやすい多糖類の使用例には、このようなものがあります。
増粘
液体をネバネバにしたり、さわり心地を変化させる
ゲル化
液体をかっちりと固める
安定化
液体中に固形分などを浮いたままにする
最近では急速に拡大している嚥下困難者用食品
多糖類の使用用途として急激に拡大している分野に、嚥下困難者用食品があります。
食べ物や飲み物を飲み下すこと(嚥下)が困難な場合に、トロミをつけたり、食品をゲル化させることで食べやすくなるのですが、このトロミ付け、ゲル化用途に多糖類は用いられます。
また、近年ヨーロッパを中心として「分子ガストロミー」という学問が広がりを見せています。分子ガストロノミーとは、食品の調理を物理的、化学的に解析した科学的学問分野とされており、これまでの食品調理の概念を科学的に解析したり、液体窒素を使った調理などの新たな調理法が生み出されたりしています。その流れの中で産まれた「エスプーマ」や「スフェリフィケーション」といった、斬新で新しい調理法にも多糖類は活用されています。
多糖類は、一見するだけではなかなか分からない多種多様な目的に使用されています。以下の表1は、多糖類がよく用いられる製品のまとめになります。
ドレッシング | デザートゼリー | 冷菓・アイスクリーム | ソース類 |
パン・ケーキ | 飲料 | 麺類 | 冷凍食品 |
菓子 | ジャム | 揚げ物 | 漬物・佃煮 |
化粧水 | 乳液 | シャンプー | 洗顔料・ボディーソープ |
ファンデーション | 歯磨き | スタインリング剤 | 高齢者向け食品 |
塗料・インク | 洗浄剤 | セラミックス | 接着剤 |
ドレッシングを製造する場合、求められる要素として適度な粘度があること、酢の類が加えられることが多いため、酸性の条件として粘度が安定であることが挙げられます。また、油と水による乳化や胡麻やパセリ等の固形分が安定して分散(懸濁)することも重要になります。その上、注ぐ際には容器から出やすく、野菜等に付着しやすい粘性も求められます。
このような要件を満たすために、耐酸性、耐熱性、乳化・懸濁安定性等の効果がある多糖類として、キサンタンガムが選ばれることが多いというわけです。
ここで述べたキサンタンガムのドレッシングへの効果は、ほんの一例です。様々な用途における要求を満たすために、多種の多糖類が持つ多彩な効果から、最適な選択を行うことになります。
それでは、多糖類について、様々な視点からもう少し詳しく見ていきましょう!
そんな多糖類とは何者なのでしょうか?
多糖類とはその名のとおり、グルコースやマンノース等の単糖が長くつながったものの総称で、広義では10個以上の単糖が結合することで構成されている炭水化物のことを指します。多くの多糖類が構成糖である単糖とは異なる特性を示し、構成糖の種類や結合方法、分子量や主鎖と側鎖の形態により、様々な性質を示します。右図は構造の例です。
例えば、非常に広い意味で最も知られている多糖類として、澱粉と食物繊維が挙げられますが、体内で分解されてエネルギーになる澱粉と、分解されない食物繊維はまったく性質が異なります。
しかし、その構造を作る基本となる構成糖の多くはグルコースでできています。このように、構成糖が同じであっても、結合方法等により異なる効果を発揮するものが「多糖類」という訳です。
工業的には食品、化粧品、トイレタリーやオーラルケア、薬品、接着剤、繊維、製紙、医療、採掘など非常に幅広い分野で活用されていて、使用される多糖類の大部分は天然由来の高分子物質となっています。その起源は大きく分けて、植物由来(種子や樹液、果実等)、海藻由来、そして微生物由来の3つに分類されます。
大分類 | 起源 | 多糖類名称 |
---|---|---|
植物由来 | 澱粉 | コーンスターチ、ばれいしょ澱粉、タピオカ澱粉、デキストリン |
植物種子 | ![]() |
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樹液 | ![]() |
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果実 | ![]() |
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その他 | セルロース、コンニャクマンナン、大豆多糖類 | |
海藻由来 | 海藻 | ![]() |
微生物由来 | 微生物発酵 | ![]() |
その他 | 合成など | カルボキシメチルセルロース、カチオン化グアーガム |
※写真はイメージです
このように様々な起源をもつ多糖類ですが、自然界では植物の骨格形成や栄養成分の貯蔵、外界からの保護、柔軟性や水分の保持のために機能しています。これらを特定の目的に使用するために抽出、精製することで工業的に利用します。こうして得られる多糖類は、それぞれ特徴的な機能、物性を有しており、さらに組み合わせることでより多彩な相互作用を発揮することができます。
その他に、多糖類は水系に溶解した際に、その構造に起因する電気的な性質を持ちます。以下に代表的な多糖類を電気的性質によって分類した表を示します。
主な種類 | 備考 | |
---|---|---|
酸性多糖類 | カラギナン、ペクチン、アラビアガム、キサンタンガム、ジェランガム、寒天、トラガントガム | カルボキシル基(-COOH)等をもつ |
中性多糖類 | タマリンドシードガム、グァーガム、ローカストビーンガム、澱粉、プルラン | 電気的に中性 |
塩基性多糖類 | キトサン | アミノ基(-NH2)等をもつ |
電気的な性質は、一見多糖類の効果に影響がなさそうですが、溶解性や溶液に含まれる他の原料との反応性等に影響を及ぼす要素となります。
主要な多糖類の多くは粉末として製品化されています。しかし、様々な効果を期待して工業的に利用する際には、水などの溶媒に分散、溶解して使用することが多くなります。
水に可溶な多糖類の多くに共通する一般的な特徴は、親水性が高く、水分子を強く保持することです。最も端的な例が、右の写真のように多糖類を用いたゲルを作成する場合で、1%量の多糖類で99%もの水を保持してゲル化させることができます。
この効果は、多糖類が多くのヒドロキシ基(-OH)をはじめとする親水基をもつことに起因します。親水基は水分子と非常に親和性が高く、その効果により水が自由に動けない結合水となって存在します。
一方、親水基により結合されていない水は自由水と呼ばれ、文字通り自由に動くことができる水となります。この自由水は食品やゼリー中では水以外の物質が作り出す構造の隙間に挟まれていますが、その構造は時間の経過と共に安定化のために締まって隙間が狭くなっていきます。すると、間に挟まっていただけの自由水は構造から溢れ出し、離水が発生してしまいます。ちょうど、出来立ての出汁巻き卵はふっくらしていて出汁を卵の中に保持していますが、時間の経過と共に全体が締まり、出汁が外に溢れ出てしまったような状態です。
その点、多糖類は高い親水性から水と水素結合することで自由水を減らし、離水の防止、増粘、さらに構造が強固になった場合にはゲル化することになります。また、このような高い親水性からくる水を保持する力により、保水性の向上や使用感の改善、食感改良などの様々な効果を与えることになります。
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