ペクチンは様々な野菜や果物に含まれる天然の多糖類で、植物細胞をつなぎ合わせる役割があります。食品添加物として使用されるペクチンは主にりんごや柑橘類(レモン・ライム)から抽出されており、ゲル化剤や安定剤、増粘剤としてジャムやフルーツソース、酸性乳飲料などに使用されています。

1.構造

ペクチンの構造はガラクチュロン酸と、ガラクチュロン酸の一部がメチルエステル化されたガラクチュロン酸メチルエステルがα-1,4結合したポリガラクチュロン酸であり、推定分子量は約50,000~360,000 kDaと言われています。

D-ガラクチュロン酸、D-ガラクチュロン酸エステル

ペクチンの構造はガラクチュロン酸とガラクチュロン酸メチルエステルの比率により、大きく2つに分類できます。ペクチン分子全体に占めるガラクチュロン酸メチルエステルの割合(エステル化度:DE)により分類され、DEが50%以上のHMペクチン(High Methylester Pectin)と50%未満のLMペクチン(Low Methylester Pectin)があります。一般的に、自然に存在するペクチンはHMペクチンであり、LMペクチンは脱エステル処理により作られますが、処理方法の違いにより更に酸処理型(LMC)とアルカリ処理型(LMA)の2種類に分類されます。アルカリ処理されたペクチンはアミドペクチンと呼ばれ、メチルエステル基がアミド基に置換され、アミド基の割合により特長的なゲル化特性を示します。

HMペクチン、LMペクチン(酸処理)、LMペクチン(アミドペクチン、アルカリ処理)

2.製造工程

図:HMペクチンの製造工程

図:LMペクチンの製造工程

3.特性

ゲル化

HMペクチンのゲル化は疎水性であるメチルエステル基が多い箇所を基点に会合が始まり、ペクチンが三次元のネットワークを組むことでゲルを形成します。ゲル化が起こる要因は分子間力(-COOCH3、 -COOH、-NH2)と-OHの水素結合であり、これらに影響を与えるのはpHと可溶性固形分(Brix)です。一般的にpHが低くなるほど、可溶性固形分が高くなるほどゲル化しやすくなります。一方、LMペクチンのゲル化はカルシウムとカルボキシル基のイオン結合により起こります。DEが低くなるほどカルシウムと反応するカルボキシル基が多くなるため、カルシウムへの反応性が高くなります。

固形分 LMペクチンのゲル形成
乳たんぱくとの反応

HMペクチンはたんぱくと反応し安定化させる働きがあります。酸性乳飲料などたんぱくを多く含む飲料等では、ペクチンを添加することにより酸性条件で起こるたんぱくの凝集や沈降を防止することが出来ます。

酸性条件ではタンパクが凝集

ペクチンとタンパクとの反応

原料による違い

一般的にアップルペクチンで作られるゲルは滑らかでスプレッド性に優れ、離水が少ない特長があります。一方、シトラスペクチンで作られるゲルは硬く、もろい特長があり、比較的離水が多いため瑞々しくフレーバーリリースが良いという特長があります。

原料による違い
特長まとめ
特長まとめ

4.応用例

食品への応用例

対象食品 使用量 使用効果
ジャム 0.2~0.7% 低糖度~高糖度の幅広い糖度で使用可能です。使用するペクチンの種類によって、耐熱性やフレーバーリリース、スプレッド性などに優れたジャムを作ることができます。
フルーツプレパレーション 0.1~0.5% 低糖度~高糖度の幅広い糖度で使用可能です。使用するペクチンの種類によって、カルシウムとの反応性の違うプレパレーションを作ることができます。
飲料 0.05~0.5% 飲料のテクスチャーの付与や懸濁安定の目的で使用可能です。乳飲料ではタンパクの凝集・沈降を防止し、添加量によって、あっさり~濃厚なテクスチャーを付与できます。
デザートベース 0.1~0.5% 使用するペクチンのカルシウム反応性によって、セット速度、テクスチャーの調整が可能です。
冷菓 0.1~0.7% ミックス液の粘度を調整し、氷晶を安定化させることが出来ます。
小麦粉製品(麺など) 0.3~0.5% 麺のコシを強化し、伸び防止効果を付与できます。