グァーガム
グァーガムとは、学名をCyamopsis tetragonolobaというパキスタンやインドで栽培されている一年生豆科植物の種子から得られる多糖類です。グアガム、グアーガム、グァガムとも呼ばれ、古くから食品をはじめとする様々な分野で利用されており、食品以外の用途向けに誘導体も製造されています。また、近年ではシェールガス採掘への利用など新たな用途を広げています。
1.構造
グァーガムは、右図に示すような繰り返しの単位からなる多糖類です。
主鎖がマンノース、側鎖はガラクトースで構成されており、ガラクトマンナンと呼ばれる電荷を持たない水溶性高分子に分類されます。ガラクトースとマンノースは1:2の比率で均一に存在し、この比率が1:3のものをタラガム、1:4のものをローカストビーンガムといい、総じてガラクトマンナンと呼ばれています。グァーガムの分子量は20~30万といわれていますが、分解された低分子タイプの製品も販売されています。
2.製造工程
グァーガムはグァー豆(クラスタマメ)の種子を原料とし、多糖類成分を分離・精製して製造されます。
3.特性
溶解性
グァーガムはガラクトース側鎖を多く持ち、主鎖同士の水素結合が少ないため、冷水に可溶です。攪拌条件にもよりますが、溶液に分散し、30分~2時間程度で粘度を発現します。また、加熱することで、溶解時間を短縮することができます。
粘度
グァーガムは添加量に比例して粘度が大きくなり、他の多糖類と比較して高い粘度を示します。
流動性
穏やかなシュードプラスチック性を示します。 また、グァーガムは溶液にシェアを加えて粘度が低下した後、シェアを除いてからもとの粘度に回復するまでに時間を要するチキソトロピー性を示します。
温度の影響
グァーガム溶液は高温時には粘度が低下しますが、その変化は可逆的です。
加熱の影響
高温に長時間放置する事で、粘度が低下し、特に酸性領域ではその変化が顕著となります。
相乗効果(増粘)
グァーガムは、キサンタンガムと併用すると相乗的に粘度が増加します。
4.カチオン化グアーガム(変性グアーガム)の構造
カチオン化グアーガムはカチオン化変性した水溶性高分子です。増粘剤、ゲル化剤として化粧品や医薬部外品、トイレタリーの分野で幅広く使用されています。
カチオン化グアーガムは、右図に示すような構造となっています。
主鎖であるマンノース及び側鎖のガラクトースのヒドロキシルメチル基及びヒドロキシル基を4級アンモニウム化した構造となっています。
5.カチオン化グアーガム(変性グアーガム)の製造工程
カチオン化グアーガムは原料であるグァーガムとアンモニウム塩を反応させて製造します。その後、洗浄、乾燥、粉砕の工程を経て製品として出荷されます。
6.カチオン化グアーガム(変性グアーガム)の特性
粘度
カチオン化グアーガムは冷水に溶解して粘度を発現します。
流動性
剪断力(シェア・攪拌力)の強さに応じて粘度が低下するシュードプラスチック性を示します。
pHの影響
カチオン化グアーガムはpH3~11の広範囲で安定な粘度を示します。
温度の影響
カチオン化グアーガムは50℃まで安定な粘度を示します。
界面活性剤との相溶性
カチオン化グアーガムはカチオン性、ノニオン性、両性界面活性剤との相溶性に優れています。また、アニオン性界面活性剤との併用時においては活性剤濃度が高いときは溶解しますが、濃度が低い場合は下の写真のような活性剤との複合体(コアセルベート)を形成し、沈殿します。この現象を利用し、シャンプーを使用するときにおいて活性剤が高濃度である洗浄前は塗布時の液だれ防止の効果、洗浄時は使用感の向上させることができます。また、低濃度となるすすぎ時は複合体(コアセルベート)が形成され、髪に付着することでコンディショニング効果を発揮します。
カチオン化グアーガムとアニオン性界面活性剤との複合体生成の様子(すすぎ時)
7.応用例
食品への応用例
対象食品 | 使用量 | 使用効果 |
---|---|---|
冷菓 | 0.1~0.5% |
増粘作用によるボディ感の増強 保水作用によるヒートショック防止、氷結晶の成長防止、オーバーランの向上、保形性付与 テクスチャー改良 |
麺類 | 対粉0.2~0.4% |
増粘・保水作用により、麺のコシを増強し、折れを防ぎ、歯切れ良くします。 油に溶解しないため、麺の過剰な吸油を防ぎ、油やけを防止します。 |
タレ類 | 0.1~0.2% | シュードプラスチック性により、固形物等の沈殿をよく防止します。 |
漬物類 | 0.1~0.7% | 増粘・離水防止として有効です。 |
マヨネーズ、ケチャップ ソース、ドレッシング |
0.1~0.5% | 成分を均一に分散させて、分離を防ぎます。 |
佃煮 | 0.3~0.5% | 乾燥防止、照りだしに有効です。 |
パン、ビスケット、 ケーキ |
対粉1%以下 |
原料小麦や卵の使用量を削減します。 製品の光沢を増し、生地を改良します。 型崩れを防止し、焼き型からの離れが良くなります。 保水力により老化を防止します。 |
畜肉、魚肉製品 | 0.05~0.2% |
結着、安定剤として有効です。 歩留まりを向上させ、離水を防止します。 |
ドーナツ | 0.05~0.2% | 吸油を抑制します。 |
飲料 | 0.1~0.5% | 増粘効果によるコクを付与します。 |
パーソナルケア製品への応用の一例
カチオン化グアーガム
対象化粧品 | 使用量 | 使用効果 |
---|---|---|
シャンプー | 0.1~0.5% | すすぎ時においてコンディショニング効果を発揮します。洗浄時の泡質を改善します。 |
ヘアトリートメント | 0.1~0.5% | コンディショニング効果を発揮します。 |
ヘアスプレー | 0.1~0.3% | コンディショニング効果を発揮します。 |