多糖類製品はほとんどの場合、粉末状で販売されています。その用途は濃厚化、乳化安定、離水防止、懸濁安定、照り・つや出し、氷晶安定、ゲル化、物性改良等、様々な食品や化粧品等のパーソナルケア製品において使用されます。それぞれのお客様の最終製品において、多糖類の使用方法に差はあるものの大部分で共通するポイントは「水に溶解すること」です。水に溶解することにより多糖類は力を発揮します。

溶解とは

一般的に多糖類の溶解は

水への投入 ⇒ 分散 ⇒ 膨潤(水和) ⇒ 溶解

という過程を経て、その多糖類の溶液物性が十分に発揮します。
この溶解過程で特に注意すべき点は水系に添加する「水への投入 ⇒ 分散」過程の際、「ダマ」を作らないようにすることです。「ダマ」は粉末の水和が早いことにより起こり、「ダマ」を作らないようにするには、水和および粘度発現をする前に、いかに素早く、均一に粉末を分散できるかが重要になります。

溶解

溶解方法

1. 「ダマ」を作らない上手な溶解ポイント
  • できるだけたくさんの水に溶解する
  • 粉末を投入後すばやく分散できるよう、混合(攪拌)速度をあげる(高速攪拌)
  • 粉末を少しづつ加える
  • 粘度が出てこないうちに全量を投入する
  • なるべく他の粉末(砂糖、デキストリン、食塩等)に分散させて加える
  • 低い温度(室温以下)の溶液に加える。
  • 5倍量以上のアルコール(70%以上エタノール)に分散させて加える。
    特にパーソナルケア用途においては、2倍量以上のエタノール等のアルコールやエチレングリコール、PEG等のポリオール類に先ず粉末を分散させて加える。
  • 油に分散させて加える
2. 上手な溶解方法
分散溶解方法

5倍量以上の砂糖やデキストリン、その他粉末原料やアルコール(70%エタノール)、油(植物油脂等、常温で液体の油脂類)などと多糖類を予備分散(混合)しておき、この分散物(粉末および懸濁液)を水に添加します。その際、分散物の添加により少しづつ粘度が出てきますが、粘度が出てこないうちに全量を投入してください。

直接溶解法

プロペラ攪拌機などで水を高速で攪拌して「渦」(乱流)を作り、その「渦」の中で粉が分散する(散らばる)ように粉末全量を投入してください。均一に分散ができたら、その後の攪拌は液全体が流れる(混ざる)程度で十分です。

直接溶解法
3. 加熱溶解・冷水溶解タイプの溶解方法

多糖類は溶解に加熱が必要な「加熱溶解タイプ」(ex.ローカストビーンガム、ジェランガム、寒天など)と常温で溶解する「冷水溶解タイプ」(ex.キサンタンガム、グァーガム、アルギン酸ナトリウムなど)に分かれます。ダマは溶ける条件にて発生しますので、下記の点を考慮することでよりスムーズな溶解ができます。
加熱溶解タイプは、基本的に常温にて多糖類を投入した場合は溶けないため、ダマはできにくくなっています。加熱工程がある場合は、常温にて投入した後、加温することを推奨しています。
また、冷水溶解タイプは常温、高温においてもダマができるため、上述の1.「ダマ」を作らない上手な溶解ポイントに気をつけて下さい。ただし、冷水に溶解する方がダマのでき方は緩やかになります。
このように、両者ともに冷水にて水に投入することを推奨しています。

その他 注意点

水に投入する素材の順番

多糖類は上述の通り、溶解することがポイントとなりますが、異なった表現をすれば、高分子である多糖類一本一本の分子がほぐれることが必要となります。下記の場合にその「分子のほぐれ」がなされない場合があります。その解決方法として水に投入する順番がポイントとなります。下記の場合はすべて、多糖類を他の素材より先に、水のみに投入することをお勧めします。ご確認ください。

  • 水(溶媒)にイオン系物質が多く溶解されている場合

    酸性多糖類(キサンタンガム、ジェランガム、アルギン酸ナトリウム等)は塩分や旨み成分等のイオン系物質(特にナトリウム、カルシウム等のカチオン)が多く含まれていると、しっかり溶解する前に多糖類とカチオンが反応し、溶け残りもしくは部分的なゲルができ、均一な溶液にならない場合があります(目安のイオン系物質の量は塩分で3%程度です)。

  • 水(溶媒)に糖類が多く溶解されている場合

    多糖類全般に関して、砂糖や果糖ブドウ糖液糖など低分子の糖類が多く含まれる場合、先に入っている糖類が溶解して、多糖類が溶解するために利用できる水が少なく、溶解できない場合があります。
    (目安の糖類の量はBrixで20%程度です)。

  • 水(溶媒)のpHが酸性の場合

    多糖類全般に関して、水に酸類が溶解しpHが酸性域になっている場合、多糖類を投入すると、多糖類の高分子の一部が切れてしまい多糖類の粘性の度合い(粘度)、もしくはゼリーのかたさ(ゲル強度)が本来よりも弱くなる(低下する)場合があります。特に高温状態で長時間放置すると可能性が高くなります。 製造工程上、多糖類を水のみに投入することが難しい場合でも、多糖類の種類、製品形態によって、解決できることがあります。本ホームページ内「多糖類選択のポイント」の食品用途の機能「耐酸性」(※会員様コンテンツ)をご覧ください。

  • 水が極端に少ない場合

    水が少ない食品(麺類、水練り製品、あんこ等)に多糖類を使用する場合は、上記の通り水分が十分にある場合とは溶解方法が異なります。その場合は、練りこむ(混和する)ことが必要なので、製造にあった混和機をご使用ください。