測定手法のお話~SEMを使ってみよう!「SEMの活用」~
測定手法
前回の豆知識では、デントくんが走査型電子顕微鏡(Scannning Electron Microscope:以降、SEMと省略)について、講義を開いてくれました。しかし、ロイドくんと原理の話で盛り上がってしまい、エコーちゃんはお疲れの模様・・・。そこで今回は、実際の測定写真を使いながら、SEMの利点を解説するようです。早速、覗いてみましょう!
エコーちゃん:ねぇデントくーん!何か分かり易い写真はないのー??
デントくん:そうだなぁ・・・SEMの良さが一目で分かる物質・・・。
ロイドくん:そうじゃ!SODA-LO®なんかはどうじゃろうか?
デントくん:確かに!構造も確認できますし、非常に分かり易いですね!
エコーちゃん:SODA-LO®ってなーにー?
ロイドくん:
SODA-LO®というのは、減塩素材といわれる塩の一種なんじゃが、ゴルフボール状の中空構造をしておってな。
通常の食塩よりもはるかに細かなミクロンレベルの粉末なんじゃ。(SODA-LO®の構造の詳細はこちら!)
エコーちゃん:へーそんなに小さな粉末でもSEMは確認できるのー?
デントくん:もちろん確認できるよ!早速、SEMで比べてみよう!
デントくん:
今回は分かり易いように普通の食塩ではなく、微粒塩と呼ばれる細かな粉末になった塩とSODA-LO®を比較してみました。
エコーちゃん:微粒塩でも粉かい粉末だけど、SODA-LO®はさらに細かな粉末なんだねー。
デントくん:
そうなんだ。SODA-LO®は平均粒子径が20μmとも言われているからねー。次はさらに拡大して、その特徴的な構造を確認してみよう!
エコーちゃん:おーなんだかぜんぜん違う形なんだねー!
デントくん:
そうなんだ!微粒塩は1つの結晶が大きな塊で、形が不均一なんだけど、SODA-LO®は細かい球状になってるんだ。さらに拡大すると、その構造が非常に細かな粒が集まったゴルフボールのような形をしていて、中に空洞がありそうな状態であることまで観察できるんだよ。
エコーちゃん:すごーい!でも、白黒の画像しか見れないんだねー。
デントくん:
そうだねー。確かに白黒の画像でしか見れないことは残念だけど、こうやってとても細かく表面が観察できて、対象を立体的に捉えることができることがSEMの大きな利点なんだよ。
ロイドくん:ところで、前回の講義で水分をたくさん含むゲルは直接観察が難しいと言っておったが、どうゆうことじゃ?
デントくん:
今回の塩の観察は、水を含まない素材ですので、問題なく観察できていますが、おっしゃるように水分を多く含むゲルでは同じように観察することは困難なんです。それは、SEMの観察が基本的には真空条件で行われるからなんです。
エコーちゃん:ゲルを真空中になんて置いたら、すぐに壊れちゃうよねー。
デントくん:
そこで、クライオSEMや低真空、大気圧SEMという機器を使用して観察を行うんだよ。一般的なSEMによる観察では、試料を固定化した後に脱水、乾燥という工程を経て観察をおこなうから、測定対象によっては試料にダメージがあるだけじゃなく、状態が変化する可能性が考えられるんだ。
エコーちゃん:その・・クライオSEMってゆー方法だと、そんな変化が起きないの?
デントくん:
クライオSEM法は簡単に説明すると、水を含む試料でも凍結させてそのままの状態で観察する方法だから、実際の状態に近いまま観察できるとっても汎用性の高い優れた手法なんだ。でも、SEMの装置の中に冷却ステージを組み込んだり、低温条件下で霜取りの操作を行ったり、きれいな断片作りなどの技術が必要とされる手法なんだよー。
ロイドくん:技術が必要なんて難しそうじゃのぉ・・・。
デントくん:
そこで、含水系を観察する他の手法としては、低真空SEMを使用する方法があります。通常のSEMは高真空の条件下で電子を検出して画像を得ますが、低真空SEMはそれよりも大気圧に近い条件で観察を行うことが可能です。水を含む試料は真空下に置くと、試料からの水分蒸発による真空エラーや、急速に乾燥が進むことで構造変化が起こるので、事前に脱水・乾燥等の工程が必要になります。しかし、低真空であればそのままの状態でも水分の蒸発を抑えることができるため、前処理を行わなくても試料の観察ができるのです。
ロイドくん:しかし、真空が基本のSEMで低真空など大丈夫なのかい?
デントくん:
当然、高真空の観察にはないデメリットもあります。高真空条件のSEMと比較すると検出感度が低下してしまうため、二次電子の検出は非常に困難であり、反射電子を用いた観察が主体になるので、その感度も低下してしまいます。
ロイドくん:
なるほどのぉ・・・。確かにデメリットではあるが、そのままの状態が観察できることのほうがメリットとして大きそうじゃな。
デントくん:
そうですねぇ・・・確かに適切に試料を観察するためには、観察条件だけではなく試料を準備する段階から色々な工夫が必要になります。それでも、こんな風に詳細な表面観察ができるので、光学顕微鏡では困難な倍率で様々な観察が可能であることが最大の利点だと思います。
ロイドくん:ところで、先ほどからエコーちゃんがまた・・・。
デントくん:・・・・・。
さて、今回の豆知識ではSEMによる観察に利用される様々な手法に関して、簡単に記載しました。より詳しくは各種専門書を参考にされることをお勧めしますが、本稿が何かの助けになれば幸いです。