測定手法のお話 ~純銀製バングルを測ってみたら、実は・・・~


これまで複数回にわたって紹介してきた走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopy:通称SEM)ですが、今回はその拡張分析法の一つ、SEM-EDXについてご紹介します。

低真空SEM-EDXは非導電性試料、含水系試料の簡便な元素マッピングが可能で、非常に便利な装置です。
組成分析や分散性、化粧品等の付着性評価等に有効(次回ご紹介予定)ですので、是非ともご一読ください。

過去のSEM紹介記事は以下から読めます。

測定手法のお話~SEMを使ってみよう!「ゲルの構造観察」~

測定手法のお話~SEMを使ってみよう!「SEMの原理」~

測定手法のお話~SEMを使ってみよう!「SEMの活用」~


EDX
とは

EDXとはエネルギー分散型X線分析(Energy dispersive X-ray spectroscopy)の略称です。(時にはEDSとも略されます。)
電子顕微鏡の場合、試料に電子線を照射し、その応答である二次電子や反射電子、透過電子を検出することにより、試料の凹凸や組成の影響が輝度差としてアウトプットされます。
また、電子線の照射により、前述の二次電子、反射電子、透過電子に加え、可視光波長の光子(Cathodoluminescence)やX線等も放出されます。それらのうち、元素成分に応じて波長域(エネルギーレベル)を変えるX線を検出することにより、試料の元素成分を定性、定量する手法が、EDXです。




EDXはSEMに装備されていることが多く、顕微観察に並行して、成分分析を簡便に実施できることが大きな特徴です。分析元素範囲はB(ホウ素 元素番号:5)~U(ウラン 元素番号:92)で、広域な元素範囲の同時分析や元素マッピングができ、試料ダメージが少なく、微小領域の分析に優れるなどの特長があります。またEDXが装備されているSEMが低真空対応であれば、導電性の少ないものや、含水試料での測定も可能です。

一方でSEM-EDXは先に述べた通り、元素の同定を得意としているため、有機物の定性には不向きです。有機物の場合、CやO、Nが検出されても、プラスチックや紙、ゴム、接着剤やタンパク質等、その用途物性がさまざまであるためです。有機物の同定にはFT-IR(フーリエ変換赤外分光分析)等での分析の方が向いています。

SEM-EDXの活用方法

一例として、中東にて行商から“純銀製”と言われて購入したバングルのSEM-EDX分析結果を記載します。

 









行商から購入した“純銀製”バングル

 







“純銀製”バングル断片の切削面。SEM-EDX測定画面。
画面上“+”の場所が測定箇所。

 

 

 

放出X線の波長と該当する元素。




一部切削し、切削面を測定したところ、純度の高い亜鉛(Zn)であることが分かりました。
旅先での不要な買い物を避けるのにも、SEM-EDXは非常に有効な分析手法であることがわかります。

次回は弊社多糖類を用いたシャンプー処方における、SEM-EDXの活用例をご紹介します。

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