豆知識-ピッチドロップテスト~世界最長の実験~
測定手法
もうすぐ夏休み。デントくんは何か楽しい実験をしようと考え中で、ロイドくんに相談しています。
少し話を聞いてみましょう!
デントくん:この長い夏休みをうまく活用して、じっくりできる実験を考えているんだけど…いい案が思いつかないんです。
ロイドくん:ほほう、じっくりできる実験とな?それならば、世界でも最も高粘度な液体を測定するのはどうじゃろう。
エコーちゃん:なにそれ!?面白そう!!
ロイドくん:その名もピッチドロップテストじゃ。
デントくん:ピッチドロップテスト?
ロイドくん:以前、豆知識でも紹介された、世界最長、ギネスにも認定されたじーっくりした実験じゃ。
エコーちゃん:なになに?面白そう!どんな実験なの?
ロイドくん:まずはピッチの説明からしようかのう。ほれ、これがピッチの一種、瀝青(れきせい)じゃ。
デントくん:へぇー、黒くて硬いんですね。
ロイドくん:そうじゃ、こうやってハンマーで叩くと…!
エコーちゃん:きゃっ!割れちゃった!
ロイドくん:
これがピッチじゃ。石油や樹脂から作られる、粘弾性のある炭質残留物の総称として言われておる。身近なものだと、アスファルトがこれに該当するんじゃ。
デントくん:粘弾性のある?
ロイドくん:そうじゃ。二人はこれが流れ落ちると言ったら信じるかな?
エコーちゃん:えー、むりだよ。だってこんなにカチカチじゃない!
ロイドくん:この硬いピッチを漏斗に入れ、液滴が落ちるまでの時間を計測する実験。それがピッチドロップテストじゃ。
エコーちゃん:これが…流れ落ちるの?
ロイドくん:
ながーい時間をかけると流れ落ちるんじゃ。ピッチは最も粘度が高いとされる液体の一つなんじゃが、昔、このピッチの流動性について、ある大学の教授が生徒に教える目的で実験を行ったんじゃ。その実験は今も継続されておるそうじゃぞ。
エコーちゃん:昔ってどのくらい昔なの?
ロイドくん:そうさのう、記録によると、試験開始は1927年とされておる。
エコーちゃん、デントくん:1927年っ!!?
ロイドくん:
そうじゃ。オーストラリア、クイーンズランド大学の、最初の物理学の教授、トーマス・パーネル氏が始めたこの実験は、加熱したピッチを、底に封をした漏斗に流し込むところから始まったんじゃ。まずはそのピッチを冷やすのに3年を要し、その後、1930年に漏斗の底を開封。ピッチの流れ落ちの観測が開始されたんじゃ。
デントくん:ちょっと待ってください。この実験がまだ継続されているということは、ピッチはまだ全部流れ落ちていないんですか?
ロイドくん:その通り!!2019年6月現在で、観測されたピッチの液滴、つまりピッチドロップはわずか9滴なんじゃ!!
デントくん:ひぇー。途方もなく気の長い実験ですねぇ。ピッチってどのくらいの粘度なんだろう…。
ロイドくん:
これまでの試験結果を元に、1984年にこのピッチドロップテストの論文が出されたんじゃが、その論文によると、粘度は2.3 x 108 Pa.sとされておる。
エコーちゃん:??
ロイドくん:水と比較すると、その粘度は2,500億倍だそうじゃ。
エコーちゃん、デントくん:ひぇー…。
ロイドくん:2014年に9滴目の落下が確認され、次の液滴落下は2020年と予想されておる。
デントくん:なんだか途方もない実験ですねぇ…。
ロイドくん:
初代パーネル教授から、今、3代目の担当者に引き継がれたこの実験じゃが、現在はインターネットで実験状況が閲覧できるようになっておる。良かったら見てみると良い。
エコーちゃん:…静止画みたい。
ロイドくん:
じゃろうのう…。ちなみにこの実験、90年近く実施されておるが、未だ、液滴落下の瞬間に立ち会ったものはいないそうじゃ。なんともロマン溢れる実験じゃと思わんか?
デントくん:
ちょっとロマンの定義を考えたくなりますね…。
ロイドくん:
そうかのう?じゃが、長い夏休みにはうってつけの実験じゃ!!さぁ、ぜひ実験を開始し、わしにピッチの落下する瞬間を見せてくれ!!
デントくん:こんな実験してたら、試験数のピッチが落ちちゃいますよう!!
エコーちゃん:!!
ロイドくん:なんとも上手いこと言いおって…。
確かにピッチドロップはなかなか落ちませんが、試験数のピッチは簡単に落ちちゃいますね。
豆知識も更新のピッチを落とさないよう、気を付けなければなりません。
Pitch Drop Experiment