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物性のお話~粘弾性 その1 「フックさんとニュートンさん」~

物性

前回の豆知識では「弾性」についてお話しました。その中で弾性を表す物理の基本法則として「フックの法則」をご紹介しましたが、その名前は、フックさんという物理学者から来ています。フックさんは、物理の中でも特に力学の分野で功績を残した偉人ですが、他にも意外な分野で今に残る功績があります。それは、コルクの顕微鏡観察から、生体の最小単位である細胞をcellと名づけたことです。その他にもボイルの法則でしられるボイルさんの助手として活躍し、建築関係の分野でも功績を残しています。

そんなフックさんはある時、第三回の豆知識でご紹介したニュートンさんと幾度も激論を交わすことになります。最初は光学の分野で、その後は引力の働きについて、最終的には万有引力のアイデアをめぐり論争を繰り広げたといわれています。そんな二人が唱えた「フックの法則」と「ニュートンの法則」はこれからお話しする「粘弾性」という性質を表す、基本的な考え方となっており、どちらも欠かすことが出来ない基本法則です。もっと言えば、このような物質の変形や流動に対する力学的な応答を扱う学問分野のことをレオロジーと呼ぶのですが、その最も基本的な法則も先の2つの法則とされています。
 レオロジーという学問分野が生まれるのは、フックさんやニュートンさんの時代よりもずっと後の時代であり、まさかこんな風に自分たちの理論が並び立つとは想像できなかったかも知れません。

 さて、随分話がそれてしまいましたが、いよいよ本題の液体と弾性の関係についてお話を進めたいと思います。

実は、世の中のほとんどの物質は粘性と弾性という両方の性質を併せ持っており、先に述べた「粘弾性」と呼ばれる性質であるといわれています。乱暴な言い換えをすれば、ほとんどの物質が「液体」と「固体」の性質を持っているという訳です。
 そんな粘弾性を示す代表的な物質としてはアスファルトや玩具のスライムが挙げられます。しかしその他の多くの物質は、その物質が持つ粘性や弾性の片方の性質が強い為、両方の性質を持つことに気づきにくいと考えられます。例えば、水は圧倒的に粘性の性質が強く基本的に液体として振舞いますが、瞬間的な強い力には変形が追いつかない為、弾力のある固体のように振舞うこともあります。丁度、プールへの飛び込みに失敗した状況を思い浮かべていただければ、ご想像いただけると思います。一方、ピッチドロップ実験というギネスにも認定された試験に使用されているピッチという物質は、常温の時に強く叩けば砕ける物質ですが、長時間の観察では流動性を示します。これらは、極端にどちらかの性質が強く出ている物質で、一般的な状況ではどちらかの性質にしか着目されないことがほとんどです。前回の豆知識で登場したマヨネーズも弾性の性質も併せ持っていますが、液体のように捉えられるのは、弾性よりも粘性の性質が強いからとも考えられます。

では、この弾性の性質がマヨネーズの中でどのように働くのでしょうか?

その働きは、2015年12月10日更新予定の次回の豆知識でお届けします。

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