物性のお話~弾性とは 「バネとネバネバ」~

これまでの豆知識では、様々な“液体”のネバネバ成分”粘性”についてお話をしてきました。しかしながら、様々な特性を示す液体の評価において、粘性だけを測定すれば良いかというと、そう簡単にはいきません。 

例えば、卵の白身部分やマヨネーズを思い浮かべてください。これらの物質が”液体”であると言われて違和感がある方は、ほとんどいないと思います。ところが、これらの物質を水平な面に流し込んだ場合に溶液の表面が水平になりません。むしろ卵白はハウスユニットとも呼ばれる卵の新鮮さの指標になるほど液が盛り上がっている方が良いとされますし、チューブに入ったマヨネーズを絞ると出口の形状そのままの液が容器から出てきます。一方で、水やハチミツのような液体は、時間の違いこそあれど、水平な面に流し込むと溶液表面は水平な状態となります。この水平となる時間の違いは、粘度による影響が大きいのですが、卵白やマヨネーズとは見た目に明らかな違いが現れます。

これらの液体の違いに大きな影響を及ぼすのが”弾性”と呼ばれるパラメーターです。弾性とは、非常に簡単に言い表せば、力を加えると変形し、力を加えるのをやめると元に戻る性質を言います。この弾性を表す物理の基本法則は、フックの法則と呼ばれ、皆さんも中学生の頃に理科の授業でバネを用いて実験したことがあるのではないでしょうか。とあるバネを引っ張る時、バネが伸びた距離と伸ばす為に必要な力は比例しており、その比例係数はバネ定数と呼ばれました。このバネのような関係と同様の関係が弾性を示す物質にも当てはまります。つまり、弾性を示す物質を、バネを伸ばすように形を変形させる(ひずみと呼ばれます)時、変形させるために必要な力(応力)の間に比例関係が成り立つ場合、バネ定数に当たる比例係数を弾性率Gと呼びます。このひずみγと応力σの関係を改めて式で表すと、σ=Gγとなります。この式からもわかりますが、弾性率が大きな物質は大きな力が加わってもほとんど変形せず、かたい物質と考えることが出来ます。

このフックの法則に完全に従う物質は完全(理想)弾性体と呼ばれるのですが、世の中にはほぼ存在しないといわれています。では、先ほど紹介したバネに多く使用される鉄のような、見るからに”固体”と思われる物質の薄い板の場合を考えてみましょう。この様な物質を非常に弱い力で少しだけ曲げたとき、力を抜くと元の形状に戻ります。この時、鉄の板はほとんどフックの法則に従う完全弾性体といえます。しかし、もっと強い力を加えて曲げると、容易に元に戻らなくなってしまいます。この戻らなくなってしまうときの力(応力)は降伏値と呼ばれ、フックの法則はこの降伏値の力以下のときのみ成り立つとされます。

さて、このように弾性のお話をしましたが、弾性は「変形」に関する話であり、流動性があり形を持たない液体には関係ないように感じるかもしれません。しかしながら、冒頭で述べたマヨネーズは、形を持って存在するにもかかわらず、液体と認識されています。これはどういうことなのでしょうか。

その関係性は、2015年11月10日更新予定の次回の豆知識でお届けします。

BACK TO TOP

サイト会員さま募集中!会員にご登録いただくと、多糖類のさまざな情報をご覧いただけます。是非、ご活用下さい。

● 処方
各種食品、パーソナルケア製品向けに
多糖類を使用した応用処方を用意しております。
● 多糖類選択のポイント
アプリケーションと物性の観点から
使用する多糖類を選択する際のポイントをご紹介します。