物性のお話~粘弾性 その2 「マヨネーズは固体になるのか?」~

前回の豆知識で、マヨネーズは粘性の性質が強い粘弾性物質であるとご紹介しました。そのため、マヨネーズは「液体」として捉えられることが多いですし、マヨネーズが固体だと考えて使用することはほとんどありません。サラダと混ぜ合わせても容易に馴染みますし、ソースとしてパンや料理に塗ることもできるため液体だとして違和感がありません。
 しかし、チューブ入りのマヨネーズを搾り出した後や瓶詰めマヨネーズをすくった状態だけを考えてみてください。その時、マヨネーズは容器から取り出した際の形を保っており、その瞬間だけを見ればマヨネーズは固体としての性質を存分に発揮しているのです。こういった性質を踏まえて、マヨネーズは日本農林規格(JAS規格)において、ドレッシングの中でも粘度30Pa・s以上のものとして半固体状ドレッシングという分類がなされています。

粘弾性を持つ物質は、弾性が強いと固体のように振る舞い、粘性が強いと液体として振舞うと説明しましたが、それぞれの性質は加えられる力の強さで変化します。マヨネーズの場合には、力がほとんどかからないと弾性が強く固体として振る舞い、加える力が増加すると粘性が勝り液体として振舞います。チューブに充填された製品では、「搾り出す」力を加えることで、粘性が強く現れ、液体として振舞います。しかし、搾り出された後は、かかる力が無くなり、弾性が強くなって固体として振舞うようになり、搾り出したままの形を維持します。加えて、この搾り出した形をどれだけ維持できるかという要素にも弾性は大きく関わります。マヨネーズも製品によって時間の経過と共に搾り出しの形を保てなくなるものから、形を長く維持するものまで様々です。この形を維持する性質を保形性と言いますが、アメリカのとあるブランドのマヨネーズは弾性が非常に強く、容器からすくうとプルンとした外観で高い保形性を示します。
 他にも、弾性が大きく関わっていると考えられるのが、マヨネーズを口に含んだ時の食感や口どけだと言われています。食感や口どけへの影響は、固体状態から液体状態へ変化する際に必要な力や固体状態の強さ、液体時の粘性の強さ等様々な要素が関与しています。弾性が強ければ口当たりが強くしっかりとした食感になり、逆に弾性が弱ければ口どけの良いトロリとした食感となります。ただし、食感に関しては粘性の影響も大きく受けるため、弾性ですべてを判断することは困難であり、人による風味試験や官能試験の判定とあわせて解析することが重要です。

マヨネーズを中心に弾性の効果についてお話しましたが、その他にも機能を発揮する場面があります。例えばマヨネーズと同じドレッシングの中でもオリーブや香辛料等の水に溶けない物質を含むドレッシングにおいて、不溶性成分が保管中に沈澱しないようにする懸濁安定性にも弾性の強さは影響を及ぼします。不溶性成分を含むドレッシングを保存中に力が加わっていない時、弾性が強いと固体のように振舞うため、容器内の不溶性成分は身動きが取れなくなり、沈澱が起きにくくなるのです。しかし、注ぐ等の力が加われば弾性が弱くなり、液体として容易に流れ出すことができます。懸濁安定性には粘度も大きく寄与するため、粘度を高くすれば沈澱を防ぐことが出来ますが、食感にも影響を及ぼします。しかし、弾性の効果をうまく利用することで、「粘度は低いのに沈澱が起きにくい」ような機能を得ることも可能になる訳です。ただ、懸濁安定性には他にも様々な要素が絡み合いますので、いずれ改めてご紹介したいと思います。

この様に、製品へ大きな影響を与える弾性や粘性を多糖類も持っており、その作用や強さは多糖類の種類によって異なります。粘性に関しては以前の豆知識で粘度測定としてご紹介し、様々な粒体特性の解説を行いました。それでは、この弾性の数値はどのように測定するのでしょうか?また、粘性との関係性や力の変化による影響はどうやって観察するのでしょうか?

その方法は2016年1月10日更新予定の豆知識で、久々登場の物知りなロイドくんがお伝えします。

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