多糖類の決まり事~食品添加物に関する規則 その1「コーデックス規格について」~

多糖類を始めとする多くの物質が食品添加物として使用されていますが、どんな物質でも食品添加物として自由に使用できるということはありません。食品添加物として使用可能な物質は、その起源や用途、使用量、品質などの基準が定められています。その基準は世界各国で様々なものが設けられていますが、代表的な基準について数回にわたって取り上げていきます。


最初に取り上げるのは、食品に関する基準の中で唯一世界的に通用するコーデックス規格です。1963年に国連内の専門機関である国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)が合同で設置した国際的な機関であるコーデックス委員会(CAC:Codex Alimentarius Commission)が策定した国際食品規格が、一般的にコーデックス規格と呼ばれます。2018年1月現在、世界187カ国及び1機関(EU:欧州連合)が加盟しており、コーデックス委員会の下には食品添加物部会(CCFA: Codex Committee on Food Additives)を含む計29の部会が設けられています。本部はローマに設置されていますが、各部会は加盟国から選ばれたホスト国の運営で開催されています。

その他の関連機関の一つとして、コーデックス委員会とは独立した科学的助言機関であるFAO/WHO合同食品添加物専門家委員会(JECFA:Joint FAO/WHO Expert Committee on Food Additives)があり、食品添加物等の安全性評価を行っています。JECFAには各国の添加物規格に関する専門家及び毒性学者が個人として参加し、食品添加物の安全性データを評価して一日摂取許容量(ADI:Acceptable Daily Intake)を設定し、成分規格(JECFA規格)を作成して公開しています。新規の食品添加物はJECFAで評価された後、食品添加物部会、及び上位機関のコーデックス委員会総会での採択を経て、食品添加物に関するコーデックス一般規格(GSFA:Codex General Standard for Food Additives)に収載されます。

では、コーデックス規格ではどのようなことが定められているのでしょうか?そもそも、コーデックス委員会の目的は、世界中の消費者の健康の保護、食品の公正な貿易の確保を目的にしています。そのため、食品の安全と品質や表示について様々な規格が設定されており、その性質から大きく3種類に分けられます。1つ目はコーデックス・スタンダードとも呼ばれる食品規格で、個別の食品に対する規格、農薬の最大残留基準値、分析やサンプリングの手法が基準として設定されています。食品添加物の使用基準を規定している食品添加物に関するコーデックス一般規格(GSFA)もこれに含まれ、添加物ごとに使用できる食品あるいは食品分類と最大量が規定されています。残る2つは食品衛生規範などのリコメンデーションと表示などを定めたガイドラインになっています。世界各国の食品に関する基準は、このコーデックス規格にできる限り沿った形で定められることが推奨されており、世界的に通用する大きな影響力を持つ規格となっています。

しかし、コーデックス規格に直接的な強制力はありません。一般的に世界中の貿易は世界貿易機関(WTO)体制下で行われており、食品貿易で何らかの紛争が起こった際には各国が批准するWTO協定に含まれる「衛生および植物検疫に係る措置に関する協定(SPS協定:Sanitary and Phytosanitary Measures)」により判断されます。そこで、判断基準となるのがコーデックス規格なのです。コーデックス規格は各国の事情に合わせて議論を経た上で決定されますが、すべての国の実情に沿っている訳ではありません。多くの場合、各国の規則は可能な限りコーデックス規格に合わせる方針がとられていますが、必要に応じて自国の状況をコーデックス規格に盛り込めるよう主張することも重要です。日本の場合、厚生労働省と農林水産省が関係府省・機関と連携してコーデックス委員会に参加し、コーデックス規格の策定に取り組んでいます。

今後の豆知識では、世界各国の食品に関する規格の中から、日本の食品添加物に関する規格である食品添加物公定書やEU圏で重要となる欧州委員会規則等について取り上げます。


※今回の豆知識で取り上げたコーデックス規格については、あくまでも概要となります。様々な規則が多岐にわたって設定されておりますので、詳しくは以下のサイトもご覧ください。

コーデックス委員会ホームページ
http://www.fao.org/fao-who-codexalimentarius/home/en/

農林水産省:コーデックス委員会
http://www.maff.go.jp/j/syouan/kijun/codex/index.html

厚生労働省:コーデックス委員会
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/codex/index.html

FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)
世界保健機関(WHO): http://www.who.int/foodsafety/areas_work/chemical-risks/jecfa/en/
国連食糧農業機関(FAO): http://www.fao.org/food/food-safety-quality/scientific-advice/jecfa/en/

 

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