多糖類の決まり事~食品表示法について その3 用途名と増粘多糖類表示~
制度
“食品表示法について”、第3回目では、様々な食品に使用される多糖類の記載方法の違いについてご紹介します。 「増粘剤」、「安定剤」、「ゲル化剤」、「糊料」ってなに? 多糖類を使用したときに、食品の原材料によく記載が見られる「増粘剤」、「安定剤」、「ゲル化剤」、「糊料」の表示。実はこれ、使用されている原材料名ではなく、「用途名」なのです。食品の原材料表示を見ると、「物質名」だけが記載されている食品添加物と「用途名+物質名」で記載されている食品添加物があります。これは、1988年の食品衛生法施行規則改正までは一部の食品添加物に限っては物質の名称でなく、使用目的が表示されていたことが関係しています。消費者等の強い要望があったため、過去の法令に倣い、現在も一部添加物には「用途名」で記載されています。「用途名」が記載される添加物は、食品添加物(指定添加物*1、既存添加物*2、一般飲食物添加物*3)のうち、指定の用途(甘味料、着色料、保存料、増粘剤、安定剤、ゲル化剤又は糊料、酸化防止剤、発色剤、漂白剤、防かび剤又は防ばい剤)で使用されたものが当てはまります。ちなみに「増粘剤」、「安定剤」、「ゲル化剤」、「糊料」については下記のように定義されています。 ✓増粘の目的で使用される場合:「増粘剤」又は「糊料」例)ソースをどろどろさせる目的で使用したとき
✓安定の目的で使用される場合:「安定剤」又は「糊料」例)飲料で果肉を懸濁安定させる目的で使用したとき
✓ゲル化の目的で使用される場合:「ゲル化剤」又は「糊料」例)ゼリーを固める目的で使用したとき
でもこれでは使用目的はわかるけど、肝心の何が入っているのかわからないので、用途名で記載する場合には用途名の後に()で物質名を記載することが義務付けられています。例えば、増粘目的でキサンタンガムを使用した場合には「増粘剤(キサンタンガム)」と記載します。 「増粘多糖類」表示は何を示す?? 食品の原材料の表示に「増粘多糖類」という表示を見たことはありませんか?先ほどの説明では出てこなかった「増粘多糖類」。これはいったい何でしょうか?「増粘多糖類」は「既存添加物」、「一般食品添加物」に記載されているもののうち、用途欄に「増粘安定剤」と記載された「多糖類」を2種以上併用する場合に使用される簡略名を指します。要するに、特定の食品添加物のうち、用途名で「増粘剤」や「安定剤」などの目的で使用したときに、2種類以上の多糖類を使用した場合、すべての多糖類の物質名を書かずに省略して「増粘多糖類」と記載してよいとされているのです。もちろん、すべての物質名を書くことも可能です。先述した用途名と合わせた場合の原材料表示例をいくつか例示してみましょう。
✓アイスクリームに「スクシノグリカン」、「タマリンドシードガム」、「カラギナン」を「安定剤」として使用した場合。添加物表示:安定剤(増粘多糖類)
✓ゼリーに「キサンタンガム」、「カラギナン」、「カロブビーンガム」をフルーツの懸濁安定と、ゼリーのゲル化目的として使用した場合。添加物表示:糊料(増粘多糖類)
✓ドレッシングに「キサンタンガム」を懸濁安定目的で使用した場合。添加物表示:安定剤(キサンタンガム)
✓「キサンタンガム」と「タマリンドシードガム」を「増粘剤」として使用した場合。添加物表示:増粘多糖類
増粘剤(増粘多糖類)となる場合には用途名の「増粘剤」を省略できます。
次回は簡略名“増粘多糖類”表示が可能な添加物について、中身は何なのかもう少し詳しく紹介してみたいと思います。 *1 指定添加物:食品衛生法第10条に基づき、厚生労働大臣が使用してよいと定めた食品添加物(例:L-アスコルビン酸、食用赤色102号など)*2 既存添加物:指定添加物の他に、わが国において広く使用されており、長い食経験があるもの(例:タマリンドシードガム、ショウガ抽出物、ペクチンなど)
*3 一般飲食添加物:一般に飲食に供されているもので添加物として使用されるもの(例:オレンジ果汁、寒天など) 消費者庁 食品表示法等(法令及び一元化情報)