食品 – 冷菓について1 – 冷菓の分類、製造法

今回、豆知識では複数回にわたって“冷菓について”シリーズを紹介したいと思います。ひょっとすると「多糖類のサイトなのに、なんで冷菓?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、冷菓の原材料を見ると、実は多くの製品に「安定剤」の表記が書かれています。この「安定剤」原料の一つが「多糖類」です。多糖類は冷菓においてはまさに八面六臂の活躍をしています。この冷菓における「多糖類」の使用目的や選び方を深く知るためには、冷菓そのものをよく知る必要があります。そのため、本報ではまず、冷菓の分類や製造方法についてご紹介したいと思います。

● 冷菓の分類
 皆さんが日頃、嗜好品として食している冷菓は乳成分によって4種類に分類されます。アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、氷菓です。これらの定義と成分規格は食品衛生法に基づく、「乳及び乳製品の成分規格に関する省令」と「食品、添加物等の規格基準」の2つの法律によって定められており、その分類の概要は以下の通りとなります。

種類別名称 乳固形分 うち乳脂肪分 補足
アイスクリーム 15.0%以上 8.0%以上 乳固形、乳脂肪が最も多く含まれている分類項。単価が高い
アイスミルク 10.0%以上 3.0%以上 牛乳と同じくらいの成分。植物油脂が併用されることも。
ラクトアイス 3.0%以上

乳脂肪の代替として植物油脂が使用されることが多い。
氷菓 上記以外 かき氷、アイスキャンディー等、乳製品が使用されない製品もある。


 冷菓のパッケージをよく観察すると、必ず上記のような種類別の名称が記載されており、さらに栄養成分表示とは別に「無脂乳固形分」、「乳脂肪分」等の記載があります。乳固形分の多い分類のほうが、高価な傾向があります。冷菓を食べられる際には、この種類別を確認してみても面白いかもしれません。

ちなみにソフトクリームやジェラートは省令上の分類ではありません。ソフトクリームは工程上の一つの呼び名で、ジェラートはイタリア語で“凍ったお菓子”を意味する一般名称です。どちらも日本で販売する場合は、上記に記載した省令の、いずれかの分類に該当します。

● 製造法
 次に、冷菓の製法についてご紹介したいと思います。
 メーカーによって詳細は異なりますが、冷菓製造工程はざっくり、以下の通りです。

 

各工程の詳細について説明するととても長くなるため、今回は他の食品製造と大きく異なる “エージング”、“フリージング”、“硬化”の3工程について紹介します。
各工程について、簡単にですが説明していきましょう。

✔ エージング
 冷菓製造用に調製された溶液はミックス液(Mix)と呼ばれます。エージング工程まで進んだミックス液は全ての原料が混合された状態ですが、冷菓を作る次の工程に入る前に、低温での貯蔵期間があります。これがエージングです。エージングは多糖類の完全な膨潤、脂肪球の結晶化や、脂肪球表面の分子配位の安定化に必要で、この工程を経ない場合、冷菓の触感が粗くなったり、溶けやすくなったりという問題が発生します。一般的には4時間以上のエージング時間が必要とされています。
 十分なエージング期間を経ていないミックス液は英語圏では“green”と呼ばれるそうです。未成熟な果実を連想させる表現ですね。

✔ フリージング
 フリージングと聞くと、「ここであの固まったアイスができるんだ!」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、そうではありません。フリージング工程は、ミックス液をフリーザーという機械にかけ、急激に熱を奪うと同時に適当量の空気を混入し、気泡や脂肪、氷の粒などがミックス液中で均等に分散する工程です。品質を左右する重要な工程で、冷菓の食感や溶けやすさ等に大きな影響を及ぼします
 フリージングの際の空気混入率はオーバーラン(Overrun)と呼称されます。1リットルのミックス液の重量が、フリージング後に半分になっていた場合、ミックス液と同体積の空気が混入したことを示し、オーバーラン100%と計算されます。

✔ 硬化
 フリージング後のミックス液の温度は、書籍では-2℃~-6℃程度と記載されていることが多いです。この温度から緩慢に冷凍庫等で凍結すると、氷の結晶や乳化粒子が成長することにより、ざらざらとした食感となります。この問題を解決するため、-30℃未満の冷風によって急速凍結する手法が、“硬化”工程です。製造法によっては液体窒素を使う場合もあるようです。

次回は冷菓に使用される代表的な多糖類やその添加効果についてご紹介したいと思います。

 参考文献

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