食品 – 介護食について -介護の区分


前回の”介護食とは?”の豆知識では、介護食とはどのようなものかについてお話させて頂きました。

介護食を利用する人の嚥下・咀嚼困難の程度、環境(病院・在宅など)は様々です。
そこで、介護食には病院や施設、または家庭といったそれぞれの現場において、共通して安全かつ適切に使用できるように、分類・評価の基準が作製されています。
なので今回は、介護食に存在する基準・分類についてご紹介させて頂きます。

現在介護食に関しては、開発経緯の異なる4つ分類・評価の基準が存在しています。





それぞれの特徴について、およその制定時期順にご紹介していきます。


1.  ユニバーサルデザインフード(UDF)
 
 ユニバーサルデザインフードは介護食というものが市場に流通し始めた2003年頃、定まった規格基準が無いことによる利用者の混乱が予測されました。そこで関係企業によって日本介護食協議会が発足、ユニバーサルデザインフードが制定されました。ユニバーサルデザインフードは介護食品を製造するメーカーによる自主規格であり、会員企業が規格を満たした製品に表示することが出来ます。
 かたさ、粘度の物性値を基準に4つの区分に分類されており、ごはんや魚、卵といった食品の例に沿ってかたさの目安も表現されています。




2. 特別用途食品 えん下困難者用食品

 特別用途食品制度自体は食品衛生上の危害の防止を目的に1947年に厚生労働省(現在は消費者庁が管理)によって開始された制度です。時代に合わせて制度改正がなされる中で、2009年にえん下困難者用食品が追加、2018年にはとろみ調製食品もその中に追加され、基準が制定されました。特別用途食品表示の食品を販売するためには消費者庁に申請し、審査によって適正が認可されると製品に表示をすることが出来ます。
 また、えん下困難者用食品にはのみこみやすさによって三段階(Ⅰ~Ⅲ)の規格があり、それぞれに規定のかたさ、付着性、凝集性の物性基準によって分類されます。

出典:消費者庁ウェブサイト (https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_for_special_dietary_uses/)


3.
日本・摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調製食分類2013(学会分類2013)

 学会分類2013は2013年の嚥下リハビリテーション学会で発表・制定されました。当時、統一された嚥下調整食の基準が存在せず、地域や施設独自の基準が混在していることが問題視されていました。そこで、国内の医療・福祉関係者が共通して使用出来ることを目的とし、食事(嚥下調整食)およびとろみについて、段階分類を示した学会分類2013が作成されました。
 食品の形態、特色、必要な咀しゃく能力などによって食事は5段階、とろみについては3段階に分類されており、中でも既存の分類との対応が存在する点が特徴です。また、学会分類2013の食事では不均一な食品についても分類がされているため、数値基準が設けられていません。


4. スマイルケア食

 スマイルケア食制度は2014年、高齢者だけでなく食機能(摂食・嚥下)や栄養に問題がある人々全てを対象とし、日本の介護食品の更なる流通・供給の拡大(国内外)を目的として農林水産省によって制定されました。
 スマイルケア食は介護食品を、青:食機能に問題はないが、健康な体を維持し活動するために栄養補給を必要とする人向けの食品、黄:噛む機能に問題がある人向けの食品、赤:のみこむことに問題がある人向け食品の3つに整理しました。
 青の分類は自己適合宣言で表示が可能、黄はJAS規格、赤は消費者庁が制定した特別用途食品の表示許可制度と対応しています。


出典:農林水産省ウェブサイト(https://www.maff.go.jp/j/shokusan/seizo/kaigo.html)



これらの分類の中の基準値として用いられている「かたさ」「付着性」「凝集性」等の物性コントロールは、多糖類の種類や添加量を変えることによって可能です。

次回はそんな「介護食における課題と、その解決手段として利用されている多糖類」についてお話させて頂きます。






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参考文献
1) 日本介護食協議会HP(https://www.udf.jp/index.html)
2) 嚥下食ドットコム(https://www.engesyoku.com/index.html)
3) 消費者庁:特別用途食品について(https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_for_special_dietary_uses/)
4) 日本・摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調製食分類2013(https://www.jsdr.or.jp/wp-content/uploads/file/doc/classification2013-manual.pdf)
5) スマイルケア食(https://www.maff.go.jp/j/shokusan/seizo/kaigo.html)




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