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「えっ、これが嚥下食?」ー嚥下食フレンチ“スラージュ”のご紹介

番外編

嚥下や咀嚼が難しい方もそうでない方も美味しく同じフレンチが食べられることをご存知ですか?
今回、日本介護食品協議会が主催された「嚥下フレンチを学ぶ講習会」にて、
創作料理 Maison HANZOYA」で嚥下フレンチ“スラージュ”を体験してきました。

「嚥下食」は「嚥下調整食品」や「介護食」等と表現されることもありますが、
何かしらの要因で嚥下や咀嚼が難しくなった方でも誤嚥の心配なく物性がコントロールされた食事のことをさします。

日本介護食品協議会によるUDF(ユニバーサルデザインフード)特別用途食品等を
スーパーやドラッグストアで目にする機会もあるのではないでしょうか。
また、病院などでも目にする機会があるかもしれません。

嚥下食として最も手軽な方法のひとつに、食材をミキサーでペースト状にする方法があります。
これにより、多くの方が喫食できるようになります。
ただ、毎日毎食ペースト食だけというのは、栄養は摂取できても味気なく、QOL(Quality Of Life)の低下が懸念されます。
そこで、企業、管理栄養士、料理人の方々によって、嚥下や咀嚼が困難になってもおいしく楽しく食べられるものが日々研究されています
そんな嚥下食の研究において、多糖類は実は重要な役割を担っています。
たとえば、サラサラの飲料やペーストにトロミ(粘度)をつけて飲み込みやすくしたり
ペーストを喫食可能な範囲で固めて食品の見た目や形を再現することで、食べやすさと楽しさの両立を可能にしています。

さて、今回お邪魔させていただいた「創作料理 Maison HANZOYA」の加藤英二シェフは、
「誰もが一緒に食事を囲み楽しめるため」に嚥下食フレンチ「スラージュ」を開発されました。
今回いただいたメニューはこちらです。

食事が始まるまでは、「ムース食が中心なのかな?」と想像していました。
しかし、実際に提供されたコース料理は、さまざまなフレンチの技法が凝らされており、
見た目にも鮮やかで食感も楽しい、だけどスプーンだけで食べられる料理の数々でした。
各メニューについて、ご紹介します。

〈ホワイトアスパラガスのムースとジュレと穂先 テュイル ダンテル〉

前菜のベースはムースやジュレですが、テュイル ダンテルと呼ばれるサクサクとした、しかし非常にくちどけのよいものが添えられており、嚥下食では表現の難しい食感のアクセントになっていました。アスパラガスの穂先もスプーンで容易に崩れ、舌でつぶせるほどの柔らかさ。同じアスパラガスでも、見た目や食感が異なる調理が施されており、食べる楽しみを感じる一皿だと感じました

〈パンスフレ〉

嚥下や摂食が困難な方がパンを食べるのはなかなか難しい面があるのですが、パンスフレはその課題を見事にクリアしていました。
フランスパンと牛乳をミキサーにかけ、メレンゲと合わせたものを蒸しあげた料理で、
パンの風味がありつつも、ふわふわで食べやすい食感になっていました。
そのまま食べても美味しく、普通のパンを魚料理や肉料理のソースにつけて食べるように、ソースにつけて食べることができました。

〈鱒とオイルバス ロックフォールと春菊のエミュルション〉

魚料理では、オイルバスをつかって40~45℃で調理することによって
生っぽさを残しながらもスプーンで切れ、舌でつぶせる食感に。

〈牛頬肉の赤ワイン煮 ジャガイモのピュレ添え〉

肉料理では、牛肉を赤ワインと赤ワインビネガー、塩で1~2週間冷蔵で漬け込むことで、
酵素と発酵により肉を柔らかくした後、そこからとことん焼いて水分を抜いたものを、さらに煮込んで作り上げられていました。
こちらもスプーンで食べられるやわらかさに仕上がっていました。

牛頬肉は、ミキサーで処理をしたムースのように均一な柔らかさではなく、繊維感が残る食感なのですが、そのままで食べにくい場合には添えられたじゃがいものピュレでまとめて食すと違和感なく美味しく食べることが出来ますという配慮の行き届いた工夫が凝らされていました。

 

〈クーランショコラ ラベンダーのグラス添え〉

最後のデザートは一見固そうに見えますが、小麦粉を使用しておらず、非常にくちどけが良い食感でした。
また、温かいクーランショコラと冷たいラベンダー味のアイスで、温度の刺激が嚥下の刺激にもつながるとのことでした。

いかがだったでしょうか?
「普通のフレンチです」といわれて提供されても違和感のない、
見た目も味も本格的な料理ばかりで、非常に貴重な体験となりました。

今回お邪魔した「創作料理 Maison HANZOYA」の加藤シェフは、
嚥下食フレンチのご予約があった場合、同行者の方にも同じメニューをお勧めするそうです。
日頃の食事、特に外食で同じメニューを食べることが難しい場合が多い中、
一緒の食事をして皆で共感できるということを大切にされているそうです。

こちらのお店では、「嚥下食フレンチ」とわかりやすく表現はされていますが、
嚥下に問題がない方はもちろん、例えば高齢になって硬いものを食べたくないといった方でも
おいしく食べられるフレンチだと思います。

加藤シェフのお話を聞いて、とても手間暇をかけて、食事される方に寄り添って作られているからこそ、
素敵なお料理が提供されていることを実感しました。
「嚥下食」という食事への様々なアプローチや生かされる技法など、新たな気づきの多い内容となりました。
一方で、こうした料理を商品化したり、大量調理で安定した品質を保つには、さまざまな課題もあります。
そんなとき、多糖類はその課題を解決し、料理人の技術に少しでも近づけるための力強い味方になります。

商品開発で課題に直面した際には、ぜひ多糖類を思い出してみてください。

なお、多糖類.comでは、今回のフレンチには及びませんが、嚥下が困難な方もそうでない方も美味しく召し上がれるレシピをご紹介しています。
◆小麦粉を使用しないガトーショコラ
嚥下が困難な方もそうでない方もおいしく召し上がれるデザートです。
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嚥下機能の低下は、加齢とともに誰にでも訪れる可能性があります。
嚥下食が特別なものではなく、どなたでも楽しめる食事になるよう、多糖類の力を最大限に活かせる研究を続けていきます。

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