多糖類の特性~キサンタンガムの溶解性と粒子径その1「粉の大きさと溶解速度」~
物性
今日はエコーちゃんが何やら実験をしているようですが、うまくいっていない様子。ロイドくんとデントくんが心配そうに見守っています。早速、様子をのぞいてみましょう!
エコーちゃん: 今日は、溶かす液の種類によってキサンタンガム溶液の粘度が変化する様子を実際の液で観察するよー!
デントくん:おぉーエコーちゃんすごーい!見たいみたい!
エコーちゃん:まずはビーカーに食塩水を入れて~グルグルかき混ぜながら・・・・
ロイドくん:のぉデントくんや。エコーちゃんは何をしておるのかのぉ。
デントくん:キサンタンガムの水溶液を色々な液体で作ろうとしているのですが・・・。
エコーちゃん:ありゃーまた失敗しちゃった~。
ロイドくん:エコーちゃんや、ちょっと液を見せてごらん。
デントくん:
うわーこれはダマ(ママコ)だらけで、キサンタンガムがうまく溶けていませんね。
エコーちゃん:
そうなんだー。かき混ぜながらキサンタンガムをゆっくり入れてるんだけど、なんだかうまくいかないんだよねー。
ロイドくん:
フーム・・・エコーちゃんや、いったいどんなキサンタンガムを使っておるんじゃ?
エコーちゃん:
えーっとねー、キサンタンガムは食塩水に溶けにくいって聞いたから、早く溶ける細かい粉末のキサンタンガムを使ってるんだよー。溶けにくいんだったら早く溶けるキサンタンガムを使えばいいと思ったんだー。
デントくん:
確かに速溶性のある細かな粉末だったら早く溶けるんだけど・・・でもね、早く溶けるってことはしっかり分散させないと、すぐに水を吸っちゃうからダマがとってもできやすいんだよ。
エコーちゃん:
えーそうなんだ!デントくんよく知ってるねー。でも、ダマってすぐにできちゃうけど、なんでできちゃうのー?
デントくん:
ダマはね、キサンタンガムみたいな親水性が高い、つまり水に溶けやすい粉を水に入れるとき、粉の分散が十分ではないとできちゃう塊のことなんだ。粉が分散されていないってことは粉がまとまった状態で水に触れちゃうんだけど、そうすると粉の塊の表面だけが水に触れるでしょ。すると、水と触れた粉の表面だけが水を吸っちゃうんだ。水を吸った表面は膜のような状態になって、粉の塊の中まで水が届かなくなるから、それ以上溶かすことが難しくなったものがダマなんだよ。
エコーちゃん:すごいねーデントくん、物知りだねー。
デントくん:
えへへ。でもね、それだけでもダマは溶けにくくなっていて厄介なのに、粉の隙間に挟まっていた空気も膜に閉じ込められちゃうから、ダマは液の上に浮き上がることが多いんだ。すると、混ぜても混ぜても上手に混ざらないから、ダマが出来ると溶かすことがとっても難しいんだよ。
エコーちゃん:なるほどねー。じゃあ、どうやったらダマが出来ずに上手に溶かせるのー?
ロイドくん:
まぁ色々な方法があるんじゃが、何よりも大事なのは液に加える粉がきれいに分散できる状態を作ることなんじゃ。素早く分散することが理想的じゃが、ポイントは「粉が水を吸って溶け始めるよりも早く分散する」ことじゃ。こうすれば粉がまとまったままで液を吸わないので、膜はできずにダマも発生しないんじゃよ。
エコーちゃん:じゃあ…溶けるのが遅い粉末だとダマはできにくいのー?
ロイドくん:
おっ!その通り、素晴らしい発想じゃ。加熱しないと溶けない多糖類などは冷たい水に加えればほとんどダマにならないんじゃ。今回のエコーちゃんの手法じゃと、キサンタンガムは冷水でも溶けるから、早く溶解する粉が細かいタイプよりも通常の大きさや、粒子の大きな粗粒タイプの方が向いとるかもしれんのぉ。
デントくん:なるほどー。でも、粉末の粒の大きさで、そんなにも溶ける速度は違うものなんですか?
ロイドくん:
うむ。良い質問じゃな。では、ちょっとこのグラフ(下記参照)を見てくれんか?横軸に攪拌時間、縦軸に粘度を取ったグラフじゃ。今回、エコーちゃんが使った細かな粉のキサンタンのほかに標準的なものと粉が粗いものを用意して、攪拌している食塩水に投入した時の粘度の変化を記録したんじゃよ。
デントくん:確かに。最終的には粘度は同じくらいですが、粘度が上昇する速度が全然違いますね。
ロイドくん:
そうなんじゃ。案外、粉の大きさも侮れないもんじゃろ。こんな風に粘度が上昇する速度が違うということは、粉が液に触れてから溶解するまでの速度が違っているとも捉えられるんじゃ。つまり、粒が大きな粉末の方が溶けるのが遅く、ゆっくりと水を吸い込んでいるようなイメージじゃ。
デントくん:
なるほど。そうすると塊の状態で粉末を投入しても、膜ができるまでに少し時間がかかるので、その間に分散させてしまえば良いんですね!
ロイドくん:
その通りじゃ。溶ける速さの違いでダマが出来にくくなるんじゃが、他にも粗い方がダマが出来にくいポイントがあるんじゃ。粉が大きいと見た目が全然違うじゃろ?
エコーちゃん:えー!見た目って言われても、こんなちっちゃな粉じゃわかんないよー。
確かに、粉の大きさが違うことはわかっても、どんな形かわかりませんね。おや?ロイドくんがまた何か準備を始めました。粉の様子を見せてくれるようですが、続きは次回の豆知識で!