多糖類の特性~キサンタンガムの溶解性と粒子径その2「粉の形と溶けやすさ」~
物性
前回の豆知識では、ロイドくんやデントくんからダマの発生理由と溶解性、粒子の大きさの関係について話がありました。その後、ロイドくんが粉の様子を教えてくれるそうですので、さっそく覗いてみましょう。
ロイドくん:
確かに粉の大きさが違うことはわかるが、見た目まではそのままでは見えんのぉ。では、前にも勉強したSEMを使ってそれぞれの粉を見てみるとしよう。
ロイドくん:写真は左から標準的な粉、細かな粉、粗い粉を、同じ倍率で撮影したものなんじゃ。
エコーちゃん:
すごーい!大きさも違うけど、粉の雰囲気が全然違うんだねー。
デントくん:
細かな粉末はずいぶん小さくて、粉同士の距離が近いように感じますが、粗い粉はごつごつしていて粉同士が近づきにくいような雰囲気ですね。
ロイドくん:
おっ!良いところに気が付いたのぉ。実はその通りで、不均一な形をした粒が集まったときに、粗い粉の方が粒同士が接していない隙間部分が大きくなるんじゃ。その隙間のおかげで流動性が良くなる、つまり粉が滑らかに動きやすくなるだけではなく、粉同士の間に空間がたくさんできることで分散性が良くなるんじゃよ。
エコーちゃん:隙間と分散性が関係するの―?
ロイドくん:
そうなんじゃ。粉が液に入ると、粉同士の間にある隙間にも当然液体は流れ込むじゃろ?つまり、粉同士の隙間に液体がどんどん侵入していくんじゃから隙間は広がり、分散していくイメージじゃよ。
エコーちゃん:ふぁーなるほどねー。じゃあ、細かい粉の場合は、その隙間がないから分散しないのー?
ロイドくん:
それも1つの理由なんじゃが、そもそも細かな粉は粗い粉に比べて凝集性という粉同士がまとまる性質が強く、流動性が悪いんじゃ。そのため、粉を液体に投入する際にも塊のままで入ってしまいやすくなるほか、隙間がないから分散しづらいんじゃ。当然、粗い粉よりも粉同士の距離が近いので短時間で水を吸って密な膜を作りやすいんじゃよ。標準的な粉も粒の大きさの選別がされていないから、細かな粉を含んでいるのでややダマが出来やすい印象じゃな。
エコーちゃん:粉の大きさが違うだけで色々なことがずいぶんと違うんだねー。
デントくん:
でも、粗い粉は分散性が良くなって、ダマが出来にくいのはわかったんだけど、ゆっくりと溶解するから、素早く粘度を出したいときなんかは不便じゃないのかな~。
ロイドくん:
鋭い指摘じゃな。確かに、こちらが期待する粘度を発揮するためには細かな粉と比較して長い時間の攪拌が必要になるんじゃ。例えば製造の現場などでは工程の中で粘度が変化することになるので、あまり好まれないかもしれんのぉ。
エコーちゃん:
かき混ぜたらその場ですぐに粘度が出るほうが、必要な粉の量もわかりやすくていいもんねー。あっ!でもインスタントのスープとか、すぐに粘度が出るものもあるけど、ダマはできにくいし、どうなってるんだろう・・・。
ロイドくん:あれは分散剤を上手に活用して、細かな粉末の早く溶けるメリットを活用しているんじゃよ。
エコーちゃん:分散剤??
ロイドくん:
さっきも説明したように、親水性の高い粉が集まった状態で水に触れるからダマが出来るじゃろ?一方で、粗い粉末のように粉同士の隙間が大きければダマにはなりにくいんじゃ。そこで、粉の間に隙間の代わりに挟まる役目をするのが分散剤じゃ。
エコーちゃん:分散剤は何か特別なものなのー?
ロイドくん:
そんなことはないんじゃよ。粉と一緒に使用するほかの粉末と混ぜれば良いんじゃ。例えば先ほどのインスタントのスープであれば、味の成分や調味料などの粉末が分散剤の役割をするんじゃ。
デントくん:他にも何か便利な分散剤はあるんですか?
ロイドくん:
親水性の高い多糖類粉末は、その多くがアルコール類に溶けないんじゃよ。他にもいくつか溶けにくい液体があるので、こういった液体に粉を投入してよくかき混ぜたものもダマを作らずに分散するには有効じゃ。どれ、ちょっとやってみよう!
(※実験中の各種液の様子はコチラの「①分散させる」をご確認ください!)
エコーちゃん:すごーい!全然ダマが出来ないねー!
デントくん:
これなら細かな粉末も使いやすいですね。でも、こういった分散剤が用意できなくて、でも素早く粘度を発揮させたいときは、どうしたらいいんでしょう?
ロイドくん:そんな時は、空間の多い顆粒に加工した粉を使うのが良いんじゃ。
エコーちゃん:空間の多い顆粒??
ロイドくん:
まずはその粉末の写真を見てみようかのぉ。この写真はキサンタンガムを造粒して顆粒化したものじゃ。通常、顆粒というとふりかけのように粉を固めたようなものが代表的なんじゃが、写真の粒はキサンタンガム同士がくっついているが隙間があるじゃろ?つまり粉同士が網目を作って空間を確保するように顆粒化しているんじゃ。
デントくん:
確かにこれなら親水性の高い粉同士が密になって接することもありませんし、隙間に水が素早く広がるので、素早く溶けそうですね。
ロイドくん:
そうじゃなぁ。一つ一つの粉末に水が直接当たる可能性が高くなるので、溶解速度も早めになる傾向にあるんじゃ。さらに、この顆粒を作る際に溶解性の高い粉末も一緒に顆粒化すればさらに分散性が高まって、使いやすい粉末になるんじゃ。
エコーちゃん:
粉も形が違うとずいぶん違うんだねー。ほんと、いろんな事をいっぺんに聞いて頭を使ったから、甘いものがたべたいなー。
ロイドくん:そういえば、造粒の話で思い出したんじゃが、一種の造粒技術で砂糖をかためると金平糖ができるんじゃよ。
エコーちゃん:コンペイトウかぁ・・・・よーっし!実物を見て勉強するために、すぐに買いに行ってこよー!
デントくん:待ってよーエコーちゃーん!
ロイドくん:・・・・。
今回の豆知識で最後にご紹介した顆粒化粉末は、嚥下困難者向け用途に使用が拡大しているトロミ剤の分野で大活躍している技術で、ダマが出来にくい上に粘度が比較的早く発揮される手法です。
このように実際に増粘多糖類を使用する際には、溶かした後の溶液特性だけではなく、スムーズに使用できるように最適な粒子の状態なども検討することが大切になります。