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測定手法のお話~粘弾性測定の実際 その2~

測定手法

前回の豆知識では、線形領域や動的、時間の概念が必要だとロイドくんから講義がありました。今回も引き続き、ロイドくんがエコーちゃんやデントくんに講義を行うそうですので、覗いてみましょう!!デントくんはちゃんと起きていられるのか・・・。

講義その4:バネとダッシュポット
デントくん:おはようございまーす!居眠りしてごめんなさいっ!

ロイドくん:しょうがないのぉ。次からは気をつけるんじゃよ。

エコーちゃん:ねーねー粘弾性の測定が難しい難しいって話だけど、本当に測定なんかできるのー?

ロイドくん
これが出来てしまうんじゃよ。その説明の為にも、まずは非常に有名なバネとダッシュポットという2つを組み合わせたモデルの説明をしようかの。

デントくん:それ聞いたことあるよ!マクスウェル模型とか色々な形があるんだよ!

エコーちゃん:すごいねーデントくん。

デントくん:えへへ。けど、パターンが色々あって、とっても難しいんだー。

エコーちゃん:えーこれ以上難しいなんて、困っちゃうよー!

ロイドくん
まぁまぁ、順を追ってゆっくり説明するから大丈夫じゃよ。では、そういった模型の構成要素であるバネとダッシュポットから説明していこうかのー。バネに力を加えるとどうなるか想像できるかい?

エコーちゃん:うーん。押したら縮むし、伸ばせば伸びるし、思ったとおり動かせると思うよー。

ロイドくん
その通りじゃ。バネは瞬間的な力にもすぐに反応するので、加えた力分だけすぐに変形し、力をなくせばすぐに元に戻るんじゃ。この性質は以前説明したフックの法則に従うので、弾性成分の挙動を受け持つんじゃ。では、ダッシュポットはどんな動きをするかな?

デントくん:押した分だけゆっくり動くけど、もとには戻らない動き方をするんだったかなぁ・・・。

エコーちゃん:おー!デントくん物知りだねー。けどダッシュポットってどんな形なのー?

ロイドくん
ダッシュポットというのは、注射器(シリンジ)のような筒に液体を入れて、ピストンを取り付けたようなもんなんじゃ。このダッシュポットは素早く動かす為には大きな力が必要じゃが、ゆっくりならば弱い力でも動かすことができる。けれども、力を抜くともとの形には戻らずにそのまま止まってしまう特性を持つんじゃ。激しく動かすには強い力が必要で、ゆっくり動かすにはあまり力を必要としないニュートン流体と同じように動くので、粘性成分を受け持つんじゃよ。

エコーちゃん:なんとなーくイメージできるけど、難しいねー。

ロイドくん
豆知識9用画像1図を使ってみよう。オレンジ色の矢印のような同じ力をバネとダッシュポットに加えたのが右の図じゃ。一定の力を加えると、黄緑色の矢印方向にバネは瞬時に変形し、バネの反発力(応力)と与えた力がつりあって変形が止まるんじゃ。そして力を抜くと緑色の矢印の方向のように、すぐにもとに戻るんじゃよ。一方、ダッシュポットは力を加えてもすぐには変形せんが、力を加えている間は黄緑色の矢印のようにずーっとゆっくりと変形するんじゃ。この変形の早さが粘度になるんじゃが、力を抜くとバネのようにもとには戻らずに、そのままになってしまうのじゃよ。

エコーちゃん:全然違う動きをするんだねー。じゃあ、この2つをくっつけるとマクスウェル模型が出来るんでしょー?

ロイドくん:おっ!鋭いのぉ。じゃが、この2つをくっつけると出来るのはマクスウェル模型だけではないんじゃよ。

講義その5:マクスウェルとフォークト
ロイドくん
まずは単純にバネとダッシュポットを直列につなげてみようかの。すると完成するのがエコーちゃんの言っておったマクスウェル模型じゃ。

エコーちゃん:フムフム。けどくっつけただけで何がわかるのー?

ロイドくん
マクスウェル模型は粘弾性の測定の中でも、さっき話した「静的」な測定の1つ、応力緩和と呼ばれる現象を上手に説明が出来るモデルなんじゃ。では早速、このマクスウェル模型に力を加えて一定の変形を加えた場合を考えてみよう。

デントくん:ぎゅっと少しだけ押し込む感じですね。

ロイドくん
その通りじゃ。この図の①が何も変形していない、バネとダッシュポットをつなげただけの状態じゃ。そこにオレンジの矢印分だけ押し込んで、固定するとどうなるじゃろう?

エコーちゃん
豆知識9用画像2んーと、ダッシュポットは変形が遅くて、バネはすぐ変形するから・・・・最初はバネだけ縮むんじゃない??

ロイドくん
おー。しっかり理解できておるのぉ。その通りで、バネだけが縮んでしまうので②のような状態になるんじゃ。しかし、そのまま固定しているとどうじゃ?

デントくん:縮んだバネは、押す力がなくなるともとに戻ろうとして伸びると思います!

ロイドくん
その通りじゃ。バネはもとに戻ろうとするんじゃが、上から押し込まれて固定されているので、下向きにもとに戻ろうとするんじゃ。その結果、ダッシュポットがゆっくりと押し込まれて、変形していくんじゃが、バネが伸びてもとの状態に戻ると押し込む力が無くなってダッシュポットも矢印の分だけ変形して止まるんじゃよ。では、最初に変形させる為に加えた力はこの時も必要かのぉ?

エコーちゃん
バネは元に戻って、ダッシュポットは力がなくなると変形が止まるから・・・必要なくなってるっ!

ロイドくん
正解じゃ。③の状態のように、力を加えなくても変形したままになっておるんじゃ。この現象を応力緩和といって、どちらかといえば液状の性質が強い粘弾性の測定に適した方法なんじゃよ。最初の変形には力が必要なんじゃが、力が必要ということは変形させたい物質、この模型ではバネとダッシュポットが内から押し返してくるから力が必要なんじゃが、この押し返す力が応力と呼ばれる力でのぉ。その力が時間の経過で弱まる過程を観察するので応力緩和と言うんじゃ。

エコーちゃん
なるほどー。力の変化が2段階で起こる感じなんだねー。けど、これって一定の変形だけど、一定の力を加えたらずるずるズーっと変形が続いちゃうってこと??

ロイドくん:おおぉ。なんとすばらしい質問なんじゃ。感激して涙が出そうじゃよ。

エコーちゃん:私だって勉強してるもんっ!そんな泣かないでよー。

ロイドくん
嬉しくて、ついつい・・・・。さてさて、エコーちゃんが言うように、マクスウェル模型は一定の力で押し続けるとズーっと変形が続いて、言い換えればただの粘性体のようになってしまうんじゃよ。そこで、登場するのがもう1つの代表的モデル、フォークト模型じゃ。これは、ダッシュポットとバネが並列につながったモデルで、クリープ現象を上手に表現モデルなんじゃ。

デントくん:クリープ?あの白い・・・。

ロイドくん
それ以上は、大人の事情でやめておくれ。では、フォークト模型に一定の力を加える様子を見てみようかのぉ。図の①のように、バネとダッシュポットを並列につないだものがフォークト模型じゃ。このモデルを上からオレンジ色の矢印の強さで一定の力を加えていくと②のように、バネもダッシュポットも押し込まれていくんじゃが、このまま力を加え続けるとどうなるかわかるかのぉ?豆知識9用画像3

デントくん
そうですねー。ダッシュポットを素早く動かすには、大きな力が必要だけど、弱くても力さえ加えておけばゆっくりと動くから、この模型もずーっと動き続けるんじゃないかな。

ロイドくん
さすがじゃなぁ。しかし、それでは正解は半分なんじゃよ。ダッシュポットの動きはそれでよいんじゃが、問題は横に並んでおるバネなんじゃよ。例えばすごく長いバネがあって、そのバネを出来るだけ縮めようとするとどんな力が必要じゃ?

エコーちゃん
最初は簡単に縮むけどー、縮んでくるとバネの反発が強くなってくるから、もっと強く力をこめないと・・・か弱い私には、でっかいバネを縮めるなんて出来ませーん。

ロイドくん
・・・・・オッホン。そうじゃな、バネはドンドン押し込むと、それに必要な力が大きくなっていくんじゃ。つまり、フォークトモデルでも同様で、ダッシュポットは一定の力によって、一定の速度で押し込まれていくが、バネは次第に応力が大きくなるので押し込む変形速度はだんだん低下し、最後にはバネの突っ張る力(応力)と一定の加えている力がつりあって変形が止まってしまうんじゃ。この同じ力を加えているにも関わらず、時間の経過と共に変形速度が変化していく様子が観察できて、どちらかといえば固体としての性質が強い物質の測定に適しているのじゃ。

デントくん:なるほどー。では、このフォークト模型では応力緩和は観察できないんですか?

ロイドくん
そうじゃなー。応力緩和を見るには、一気に一定の変形を与える必要があるんじゃが、ダッシュポットがそんな動きはできないので、観察には向いていないんじゃ。

デントくん
得意不得意があるってことですね。では、粘弾性の測定には物質の性質を考えてどちらかのモデルに合うような、試験法を検討しないといけないんでしょうか?

ロイドくん
ふむ。確かにこの2つのモデルを上手に活用すれば粘弾性の特徴の一面は明らかに出来るんじゃ。けれども、実際の物質の粘弾性がすべてこんな単純なモデルで表現できるわけではないんじゃよ。例えばバネの太さや長さが違えば変形させる力は変化するし、ダッシュポットの中の液体が違ったり直径が違えば動かせる速度も変化するじゃろ?そういった色々な種類のバネやダッシュポットがたくさん集まって連なっているのが実際の粘弾性体と考えられるのじゃ。

エコーちゃん豆知識9用画像4
えーそんなにいっぱいくっついたら、あっちが動くのにこっちは動かなかったりめちゃくちゃになっちゃうよー。

ロイドくん
その通りじゃ。そこで、まとめて測定する為に登場するのが「動的粘弾性測定」なんじゃ。

エコーちゃん
なーんだ。やっと本命のお話が始まるんですねっ!

ロイドくん
・・・。すまんのー・・・話が長くて。

エコーちゃん
わーーーそんな意味じゃないですよー!ほらっ!早く続きが聞きたいなー♡ 

どうやらロイドくんは少し、ご機嫌斜めになってしまったようです。こんな調子ですが次回の豆知識では、ロイドくんが動的粘弾性測定について、きっと機嫌を直して説明してくれるはずです。

 

 

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