多糖類の決まり事~食物繊維の熱量 その3「多糖類製品の熱量について」~

前回までの豆知識で、食品表示法における栄養成分の考え方や、食物繊維の位置づけ、熱量に関する係数の考え方等をご紹介しました。そこで今回は、当サイトで紹介している多糖類の栄養成分がどのようになっているのか、実際に主要製品情報 (会員ページ)に添付されている多糖類製品の栄養成分表を参考に、ロイドくんに説明してもらいましょう。
loydロイドくん:では、何か例を出して解説を進めようと思うんじゃが・・・・。

エコーちゃん
:はいはーい!私の名前の由来になった当社商品エコーガム®の原料「キサンタンガム」が良いと思いまーす!

デントくん:僕も名前の由来になった当社商品ケルデントの原料「キサンタンガム」が良いでーす!

ロイドくん
キサンタンガムが大人気じゃなぁ・・・。では、最も標準的なキサンタンガム製品である〝エコーガム®〟で話をしようかのぉ。栄養表示としてエコーガム®の熱量はいくらかのぉ?

エコーちゃん:28kcal/100gです!

デントくん:あれ・・・意外と高いような・・・。

ロイドくん
そうじゃなぁ。前に豆知識で紹介した食物繊維の換算係数は、1gあたりの表示で記載されておるが、栄養成分表示は基本的に製品100gあたり、もしくは製品の実際量あたりの熱量を示すから若干高く感じるんじゃ。

エコーちゃん:熱量の基準になる数量が違うんだねー。

デントくん
確かに!ちゃんと単位を確認しないといけませんねー。じゃあ、換算係数と同じ1gあたりの量として考えると・・・エコーガム®は0.28kcalだからすごく低いですね。

ロイドくん
そうなんじゃ。とくにキサンタンガムは腸内細菌がほとんど発酵に利用できない食物繊維じゃから、換算係数は0kcal/gなので、ほとんど熱量を持たんのじゃ。

エコーちゃん:なるほどねー。けど、キサンタンガムの換算係数は0kcal/gなのに、エコーガム®の熱量は何で0kcal/100gにならないのー?

デントくん
僕知ってるよー!製品になっているエコーガム®には、キサンタンガム以外の物質もほんの少しだけ含まれているからなんだよ!

エコーちゃん:すごいねーデントくん!物知りだね!

ロイドくん
確かにそうじゃな。エコーガム®は、発酵によって作られるんじゃが、その影響で微量の糖質やタンパク質が含まれてしまうんじゃ。それらが、僅かながらに熱量に影響しているんじゃよ。次にわしの名前の由来になったタマリンドシードガムを見てみよう。

デントくん
標準的なタマリンドシードガム製品である〝グリロイド®2A〟は217kcal/100gですね!なんだか100g分で表示すると随分高く感じますね。

エコーちゃん:確かにエネルギーが高くて、恐ろしい・・・。

ロイドくん
これこれ、勝手なイメージを持ってはいかんよ。こちらもキサンタンガム同様に換算係数と同じ1g表示にすると、2.17kcal/gとなるんじゃ。タマリンドシードガムはキサンタンガムと違って、換算係数が2kcal/gに設定されておるから、製品の大部分を占める食物繊維であるタマリンドシードガムによって一定の熱量をもつことになるんじゃ。

デントくん:食物繊維なのに一定の熱量を持つというのは、すごく不思議な感じがしますね。

ロイドくん
確かにのぉ。じゃが、通常の炭水化物のように直接エネルギーとして吸収するわけではなく、食物繊維は腸内細菌により発酵されることで熱量をもつことになるんじゃ。この違いは意外と重要で、直接吸収しないことで、血糖値の上昇や体重増加への影響は非常に低いとされておるんじゃ。

エコーちゃん:ほぇー。同じエネルギーでも由来が違うと影響まで違うんだねー。

ロイドくん
その通りじゃ。それ以外にも食物繊維は腸内環境の改善に影響するので、熱量が高い方がより有効に作用しているとも考えられるんじゃよ。

デントくん:ところで、この熱量という数値はどういった方法で算出されているのですか?

ロイドくん
ふむ。では、食品表示基準に沿った形で、簡単にエネルギー(熱量)の算出を行ってみようかのぉ。例として、グリロイド®2Aの栄養成分を栄養成分表風に記載すると以下のようになるんじゃ。

 
栄養成分表示  グリロイド2A
(100g)
熱量 217 kcal
水分 2.9 g
たんぱく質 1.4 g
脂質 0.2 g
炭水化物
     -糖質
     -食物繊維
95.2 g
9.7 g
85.5 g
食塩相当量 0.1 g
灰分 0.3 g


エコーちゃん
:コンビ二なんかで売ってるパンなんかの裏側にも書いてあるやつだねー!でも、これはどうやって測定してるのー?

ロイドくん:それはのぉ・・・。ここで話すと長くなるから、バサッと割愛じゃ!

デントくん:大人の事情・・・?

ロイドくん
そんなことは無いぞ。前回の豆知識でもさわりは紹介しておるし、細かな方法は消費者庁で開示されておるので、ここで改める必要も無いということじゃ。これらの各種栄養成分をエネルギー換算係数であるたんぱく質:4kcal/g、脂質:9kcal/g、糖質:4kcal/g、食物繊維(タマリンドシードガム):2kcal/gとして、各項目を計算すると以下のようになるんじゃ。

 熱量   =   タンパク質1.4g×4kcal/g  +  脂質0.2g×9kcal/g  +  糖質9.7g×4kcal/g  +  食物繊維85.5g×2kcal/g
   217kcal  =                5.6kcal                +   1.8kcal             +     38.8kcal          +     171kcal

デントくん:こうやって計算式を見てみると、タマリンドシードガムの場合、熱量の大部分が食物繊維由来なんですねー。

ロイドくん
そうじゃのぉ。まぁ原料が植物の種子じゃからどうしても種子内部のタンパク質等が残ってしまうんじゃが、それも僅かということになるのぉ。

エコーちゃん:けど、熱量はしっかりあるんだから、食品に使ったらエネルギーは上がっちゃうんじゃないの?

ロイドくん
それがたいしたことは無いんじゃよ。当サイトの処方 (会員ページ)を見てもらえばよいんじゃが、タマリンドシードガムやキサンタンガムといった多糖類は、食品中で1%以下しか使用されない場合がほとんどなんじゃ。例えば、タマリンドシードガムを1%添加したソースを作った場合を考えてみよう。ありえない仮定じゃが、エネルギーを生じる物質がタマリンドシードガムしか含まれないとすれば、ソース100g中のエネルギーいくらになるかの?

デントくん:1%だから・・・ソース100g中のエネルギーは約2kcalとなります。これは表示上、カロリーゼロと表記できますね!

エコーちゃん:カロリーゼロなんて、素敵な響き~!

ロイドくん:まぁそんなソースありえない話なんじゃが、それほど多糖類はエネルギーに対しては影響が少ないということなんじゃよ。

デントくん:確かに、少量で液体をネバネバに出来る多糖類を大量に添加するなんて、なかなかありませんからねー。

ロイドくん
しかしながら、グァーガム酵素分解物などはほとんど粘度が出ない物質じゃから、より多くを配合することで、食物繊維としての機能を十分に発揮することが出来るのじゃ。その結果、特定保健用食品の“関与成分”として基準を満たせば使用できるんじゃよ。

エコーちゃん:話題の“トクホ”だねー。けど、グァーガム酵素分解物を多量に加えると、エネルギーが高くなっちゃうんじゃない?

ロイドくん
確かにそうじゃな。グァーガム酵素分解物のエネルギー換算係数は2kcal/gじゃから、多量に加えればそれなりの熱量を持つんじゃ。しかし、エネルギーの算出経路が違うので、血糖値の上昇や体重増加への影響は非常に低いとされておる上、熱量が高いということはそれだけ短鎖脂肪酸の産出量が多く、腸内環境の改善にも有効と考えられるんじゃ。
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デントくん:なるほどー。一口に“熱量”といっても、その由来で違うんですねー!

ロイドくん:そうじゃなぁ。けれども、何事もバランスが大事じゃからそれだけを摂取すればよいわけでは・・・・

エコーちゃん
ヨーグルトに多糖類を入れてとろみをつけつつ、グァーガム酵素分解物で水溶性食物繊維をいっぱい補給すれば、腸内環境美人に・・・。へへへ。

ロイドくんデントくん:・・・・・。

何事も、バランスって大事ですよね・・・。さて、次回の豆知識は、以前ご案内していた動的粘弾性に関する実際の測定データのご紹介を行う予定です!

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